2015 Fiscal Year Research-status Report
放課後の生活習慣と生理応答の日内変動特性,健康関連尺度の関連性に関する研究
Project/Area Number |
15K21546
|
Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
西村 一樹 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (50550026)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 概日リズム / 健康関連尺度 / 放課後 / 体温 / 生活習慣 / 運動 / 夕食 / 睡眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは1日を周期として変動する概日リズムを有する.概日リズムは,生体内の様々な生理現象に関与し,恒常性維持に重要な役割を担う.体温のリズムは,最も基本的な概日リズムの1つである.起床前(4-6時)の体温は最も低く,その後上昇し16-18時頃ピークを迎え,夜再び下降する.我々は,体温の日内変動特性を定量的に評価する方法を確立した(投稿中).平成27年度は,若年男性150名,中高齢男女55名(年齢;64.0歳)を対象に起床から就寝までの2時間毎に1週間の舌下温測定を行い,舌下温の日内変動特性を評価した.夕刻の生活習慣は質問紙調査(自記式)を用い,評価した.健康関連QOL尺度指標は,SF-36v2日本語版(認定NPO法人健康医療評価研究機構)を用いた(自記式).また,単回の夕食の摂取時間帯の違いが夕刻(18-22時)の生理応答および夜間睡眠中の生理応答に及ぼす影響を明らかにした. 本研究の主な知見は,以下の2つである.①中高齢者における精神的側面QOLサマリースコアの高値群は,低値群に比較して起床時の舌下温,最高値の出現時刻に有意な差が観察される.しかしながら,身体的,役割/社会的側面QOLサマリースコアにおける両群間の日内変動特性に有意な差は観察されない.②遅い時間帯(21時半)の夕食摂取は,早い時間帯(18時半)の夕食摂取に比較して,夕刻の心拍数,拡張期血圧に有意な差が観察される.また,遅い時間帯の夕食摂取は,夜間睡眠中前半(23-26時)の収縮期血圧を有意な高値で推移させる.これらの知見は,中高齢者も若年者と同様に舌下温の日内変動特性と精神的健康度に関連性が存在することを示す.また,遅い時間帯の夕食摂取は,入眠、効率的な睡眠を妨げる一要因である可能性が考えられ,夕刻の生活習慣が概日リズムの形成・修復に関与する可能性を示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に実施を予定した研究課題について,概ね遂行できたものと考える. 平成27年度は,若年者150名および中高齢者55名を対象に起床から就寝までの2時間毎に1週間の舌下温測定を行った.また,生活習慣に関する調査および健康関連QOL尺度指標を評価した.本研究の主な知見は,以下の2つである.①中高齢者における精神的側面QOLサマリースコアの高値群は,低値群に比較して起床時の舌下温,最高値の出現時刻に有意な差が観察される.しかしながら,身体的,役割/社会的側面QOLサマリースコアにおける両群間の日内変動特性に有意な差は観察されない.②遅い時間帯(21時半)の夕食摂取は,早い時間帯(18時半)の夕食摂取に比較して,夕刻の心拍数,拡張期血圧に有意な差が観察される.また,遅い時間帯の夕食摂取は,夜間睡眠中前半(23-26時)の収縮期血圧を有意な高値で推移させる.得られた知見は,地域の中高齢者を対象に本学が開催している健康づくり教室において健康づくり講話として講演し,知見の普及に努めた.また,ホームページを作成し,本研究の研究成果を社会・国民に分かりやすいような表現でホームページに公開した.さらに,学術集会等で口頭発表し,学術的な評価を受けた.また,学術雑誌に査読付き論文として1編投稿した.平成28年度は舌下温の測定の対象者数を増やし,夕刻の生活習慣と舌下温の日内変動特性の関連性を検討する.また,単回の夕刻の運動実施時間帯の違いが夕刻および夜間睡眠中の生理応答に及ぼす影響を検討する. 平成28年度の研究課題は,研究協力者とすでに研究打合せを済ませている.また,対象者にも研究参加の同意を得ており,研究課題に取り組んでいる.このことから,計画通りに遂行できる予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は舌下温の測定の対象者数を増やし,夕刻の生活習慣と舌下温の日内変動特性の関連性を検討する.また,単回の夕刻の運動実施時間帯の違いが夕刻および夜間睡眠中の生理応答に及ぼす影響を検討する.平成29年度は,得られた知見に基づき生活習慣介入プログラムを開発する.そのプログラムを用いて,大規模な介入調査を実施し,生理応答の日内変動特性および健康関連尺度を指標に介入効果を明らかにする. 舌下温の測定および評価方法は同様とし,対象者数を増やし検討する.得られたデータから,夕刻の生活習慣と舌下温の日内変動特性の関連性を検討する.単回の夕刻の運動実施時間帯の違いが夕刻および夜間睡眠中の生理応答に及ぼす影響は,運動実施時間帯を17時と21時に設定し,最大酸素摂取量40%強度で30分間の自転車漕ぎ運動を用いる.夕刻(17-22時)の測定項目は,心拍数,心臓自律神経系調節,舌下温,血圧とする.夜間睡眠中(23-7時)の測定項目は,心拍数,心臓自律神経系調節,血圧とする.得られたデータを2条件で比較し,夕刻の運動実施時間帯の違いが夕刻および夜間睡眠中の生理応答に及ぼす影響を検討する. 得られたデータは,対象者にフィードバックを行う.研究成果は,国際学会(ヨーロッパスポーツ科学学会),国内学会(日本体力医学会,日本体育学会,日本運動生理学会など)で公表し,評価を受ける.原著論文(査読あり)として学術雑誌に投稿する.我々が作成したホームページ上に得られた知見を公表し,研究成果の普及に努める. 本研究は,広島工業大学高本登教授,長﨑浩爾教授,吉備国際大学山口英峰准教授,流通科学大学関和俊准教授,安田女子大学野瀬由佳講師,川崎医療福祉大学小野寺昇教授,並びに各研究室の大学院生,学部学生を研究協力者として遂行する.
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画で平成28年度に実施予定であった夕食の摂取時間帯と夕刻および夜間睡眠中の生理応答の関連性に関する研究を前倒しして実施した.この研究に使用するリストバンド型ライフコーダーを購入したため,データ解析用パーソナルコンピューターを購入する費用が不足した.その差額が繰越額となった.また,当初予定していた研究打合せを実施できず,メールや電話で打合せを行ったことから,研究打合せのため計上した旅費が繰越となった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費の繰越額は,データ解析用パーソナルコンピューターの購入費に充てる.旅費の繰越額は,研究打合せおよび研究成果を学術集会において発表するための旅費に充てる.
|
Research Products
(11 results)