2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Democratic Protection of Aboriginal Right of Self-Government
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15K21559
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
守谷 賢輔 福岡大学, 法学部, 准教授 (40509650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 先住民 / 先住民の権利 / 憲法 / カナダ / 自治 / 協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
民主過程による先住民の権利保障を検討する手がかりとして、ヌナブト土地請求協定(land claim agreement)の締結の背景、権利保障の現状などの研究に着手した。ヌナブト土地請求協定は、20年を超える交渉の末に締結されたものである。1971年にアラスカ先住民がアメリカ合衆国と協定を締結したことが大きな契機となり、イヌイットは連邦政府との交渉に乗り出すが、合意に達しなかった。しかし、1982年憲法に先住民の権利が明記されたこと、その後の憲法修正により、土地請求協定が規定する権利が先住民の条約上の権利に含まれることが明確化されたことで、交渉が加速化した。 このように、ヌナブト準州の設立は、他国の議論の影響が強いこと(なお1982年憲法は当初、先住民の権利を明記するものではなかったが、当時の本国イギリスに先住民が代表団を派遣したことで実現した)、そして先住民の権利運動が盛んになってきていた時代状況を背景としている。 ヌナブト土地請求協定が定める統治構造は、先住民法(イヌイット法)による自治を企図しているが、実際のところ、先住民法に基づく自治が十分に実現しているとは言い難い。先住民法がコモン・ローと大きく内容を異にすること、先住民法への理解が乏しいこと、ヌナブト準州が連邦の権限のもとにあることにその要因(限界)があると言いうる。 また、財政状況が苦しいが連邦からの「支援」が行き届いていないこと、観光資源が乏しいことも、自治を実りあるものにする障壁となっている。
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