Outline of Annual Research Achievements |
特定健診受診者の経済的要因が糖尿病発症に与える影響について評価を行った. 対象は平成22年度特定健診を受診した全国健康保険協会福岡支部の男性被保険者のうち,糖尿病でない者とし,これらの5年後の糖尿病の発症状況について比較した.糖尿病の発症については,それぞれ平成22年度と27年度の健診結果よりヘモグロビンA1cが6.5%以上,またはレセプト情報より糖尿病薬を調剤されている者と定義した.経済的要因として標準報酬月額を15万未満,15-24.9万,25-34.9万,35-44.9万,45万以上の5群に分類した.これら標準報酬月額と糖尿病発症頻度について比較し,糖尿病発症を従属変数,標準報酬月額を経済的指標とし,年代,平成22年度健診受診時の高血圧の有無,脂質異常症の有無,食事スピードを他の独立要因としたロジスティック回帰分析を行った.年代は40代,50代,60歳以上の3群に,食事スピードは平成22年度特定健診質問票の回答より「速い」「普通」「ゆっくり」の3群とした. 標準報酬月額が15万未満の群は398名(2.5%),15-24.9万の群は2,617名(16.5%),25-34.9万の群は4,959名(31.4%),35-44.9万の群は4,772名(30.2%),45万以上の群は3,072名(19.4%)であり、糖尿病発症頻度はそれぞれ7.8%、7.0%、5.3%,5.0%,4.9%で低所得の群で有意に高かった。単変量分析の結果,低所得,60歳以上,併存症,早食いが糖尿病発症のリスク因子として認められた.一方,多変量分析で年代,併存症の有無,食事スピードで調整した結果,低所得はリスク因子として認められなかった.これは,食事スピードが経済的要因と糖尿病発症の双方に関連しているためであると考えられる. 低所得は糖尿病発症に影響を与えているが,その原因は早食いである可能性が示唆された.
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