2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘルマン・コーヘンにおける無限判断とその現代的意義
Project/Area Number |
15K21573
|
Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
馬場 智一 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (10713357)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | コーヘン / マイモニデス / 無限判断 / ユダヤ教学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コーヘンによれば無限判断の歴史はほとんど哲学の歴史と同じだけ古いが、その中世における体現者であるマイモニデスは、コーヘンの無限判断理解において重要な位置を占めている。本研究の目的は、コーヘン以後のユダヤ系の思想家における無限判断の論理の継承と変形についての解明を含んでいるが、彼らに共通するマイモニデス理解の特殊性については、これまで自覚的な研究対象としてこなかった。レオ・シュトラウスによるコーヘン批判がその特殊性を明らかにしたことは、以前から知られているものの、そのような特殊性がもつ歴史的な意義については、明らかではなかった。 本年度の研究により、倫理的特徴を重視するコーヘンのマイモニデス読解は、明らかに19世紀のユダヤ教学の流れの中に位置づけられること、この読解は、生の指針としての意義を失ったユダヤ教を賦活する狙いを明確にもったものであること、以上が明らかになった。すなわち、『迷えるものへの導き』がもつ政治的な次元を捨象する倫理的読解がもつ、歴史的社会的文脈性が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の成果は、目的としては想定していなかったものである。ただし、これまで漠然とした疑問として抱いてきたものが解明されたので、その点では進展があったといえる。その代り当初予定していた通りには研究が進まなかったので、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果から、無限判断の倫理学的射程についての解明は進展が期待されるので、これを優先的な課題として扱う。次に比較的的を絞った作業(コーヘンによる否定の否定解釈、知覚の予期解釈)を行い、哲学史の全体像にかかわる作業については、これら課題の成果をもって最後に取り組むこととしたい。
|
Causes of Carryover |
残高が少額のため適当な物品購入ができなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と合わせて物品購入のために使用する。
|