2015 Fiscal Year Research-status Report
心の理論における日中韓豪比較と各文化に即した心の理論尺度作成の試み
Project/Area Number |
15K21577
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
東山 薫 龍谷大学, 経済学部, 講師 (40563763)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心の理論 / 文化差 / 成人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)同じ東アジアでありながら心の理論の発達に差が見られる日本,韓国,中国および英語圏の中で最も発達が早いオーストラリアの4か国の成人を対象に他者の心を推論する課題を実施し文化差を探ること,(2)欧米で考案された課題では心の理論の能力を適切に測定できない可能性があるため,各文化の実生活において心の理論で重要視される内容について明らかにし,文化普遍と文化固有の内容を併せた尺度を作成し,心の理論と関連すると言われている様々な能力との関連を検討することを目的としている。 本年度は,従来心の理論における文化差の原因として指摘されながら同一文化内でしか実証データがなかった心的状態語の使用や行為者(主語)不在の程度および他者の心を推論する際の方略を,心の理論課題を用いて4か国の言語表現の特徴を掴む計画であった。まずは「心の理論課題」「相互独立・相互協調的自己観尺度」「情動的共感性尺度」「Interpersonal Reactivity Index (IRI)」「Empathy Quotient (EQ) / Systemizing Quotient (SQ)」の5つの尺度を4か国に翻訳し,オーストラリアでは質問紙に,それ以外の国ではweb上で回答できる形式にして日本人375名,中国人91名,オーストラリア人131名に実施した。早々にデータ収集ができた日本人とオーストラリア人を比較すると,幼児に実施する心の理論課題を成人に実施したにもかかわらず,隠された感情の理解(友人に意地悪されたが本当の気持ちを周りには知られたくないので隠そうとした主人公の表情を問う課題)において,日本人は有意に成績が悪いという結果になった。また,心の理論課題すべてにおいてオーストラリア人の方が行為者(主語)を入れて回答理由を記述している人数が有意に多かった。中国,韓国との比較も早々に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本,中国,オーストラリアのデータは集まったが,韓国のデータがまだ集まっていない。しかし,webで回答できる形式は完成しているので,再度協力者を募り早急にデータを集めるよう努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は4か国において他者の心を推論する際に重視される内容を調査し,文化普遍と文化固有の内容を併せた心の理論尺度の作成を行う予定であった。しかし,1年目の心の理論課題を含む5つの尺度の実施において,質問紙のみならずwebで回答できるような形式にしたにもかかわらず,韓国,中国ではデータ収集が思うようにいかなかった。従って,まずは日本において心の理論課題では測定できないような他者の心を推論する能力の測定が可能か否かについて,新しい尺度を作成し調査を行うことが重要であると考える。
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Causes of Carryover |
韓国人のデータが収集できず,回答の翻訳料を次年度に持ち越したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集した韓国人データの回答を翻訳するのに使用する
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