2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける私学助成を通じた社会統合の実現とその市民性教育プログラムの研究
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15K21578
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Research Institution | Nakamura Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
橋本 一雄 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 講師 (30455084)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会統合 / 私学助成 / 政教分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度までの研究において、2004年の宗教的標章着用禁止法制定以降、フランスにおいてイスラム団体が独自の私立学校を設置・運営している状況を調査し、当該学校が政府からの私学助成を受けるべく、教育内容を公立学校に準拠する形で教育課程を編成していることが分かった。また、当該学校では女子生徒のスカーフ着用が容認されており、私学助成を受けるための要件として、女子生徒の宗教的標章の着用状況等は問われていないことも確認することができた。こうした研究の成果については、平成28年度に日本公民教育学会で口頭発表を行うとともに、1989年にスカーフの着用をめぐる論争が提起されて以降、2000年代に宗教的標章等着用禁止法が制定されるまでの経緯及びイスラム系私立学校の設置が目指されることとなった背景について、平成29年8月に公刊される論文集において公表する予定である。また、平成28年5月の段階における(調査対象団体が設置・運営する)イスラム系学校の状況等について、フランス国内での分布の状況や私学助成の交付・未交付の状況等の現況についても把握することができたため、この点について、平成29年度に全国学会の学会誌に投稿し、公表する予定である。現地調査の結果、上記の私学助成は、教育法典に明記された要件にもとづいて、他の宗教団体等が設置する学校と同一の基準で交付されているものと見ることができ、この要件に公立学校では禁止されている宗教的標章の着用の認否は含まれていない点からして、私立学校の固有性が保障されているものと理解できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の実施計画として懸念していたのは、調査対象の団体がフランス国内で設置・運営を進めている学校数がどの程度に及び、そのうちどの程度が私学助成を受けているのかを調査できるかどうかという点であったが、上述のとおり、平成28年5月の段階での状況が判明したため、一つの課題は克服された。現在、これまでの研究成果を公表する作業に取り組んでおり、研究の実施計画はおおむね予定どおりに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は、調査対象の団体における市民性教育の内容と、当該学校に在籍する生徒の学力及び進路の状況に関する調査を引き続き実施する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった外国書については、所属先から交付された研究費(図書費)によって購入することができた。また、作業を委託せず、自ら行うことによって予定していた人件費を削減することができたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の図書購入費に充当する予定である。
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