2016 Fiscal Year Research-status Report
Construction of Resource Recycling Process via Chemical Conversion of Copper Smelter Slag
Project/Area Number |
15K21582
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
羽切 正英 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70435410)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 銅水砕スラグ / 再資源化 / 抽出 / 資源回収プロセス / リン酸 / リン固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度当初には,昨年度までの検討内容について継続的に研究を行うとともに再現性の確認を行った。銅水砕スラグの酸浸出性について検討した結果,塩酸および硫酸によって主な構成成分が溶出することが分かった。また,その溶出には酸濃度の影響が顕著であり,高い酸濃度領域において浸出されたケイ素分は,抽出液中においてシリカヒドロゲルを形成することが明らかとなった。これらの事実から,銅水砕スラグからの元素回収において,酸溶脱が有効な手法であることが分かった.金属元素を液相に分離して回収することが可能であるほか,成分の溶脱と同時に生成するヒドロゲルから高い比表面積を有する多孔質シリカを得ることができた。 一方で,塩酸抽出や硫酸抽出での資源回収時に形成するゲルが,抽出や再資源化処理の際の妨げになるケースも考えられた。そこで,新たに種々の酸による抽出を試み,成分の溶出性等について検討した。その結果,抽出に低濃度のリン酸を用いることで,銅スラグ中の鉄のみを鉄塩として選択的に回収し,さらには抽出残液を加熱処理することで高純度のシリカを得る方法を見出した。この方法で得られる鉄塩は,ある程度の純度(>97%)を有しながら非晶質のリン酸鉄であり,スラグからの鉄回収,廃棄リン酸からのリン固定化法として本法は有用と考えられる。リン酸鉄は代表的な二次電池であるリン酸鉄リチウムの原料として知られる。そこで銅スラグ由来のリン酸鉄を原料とし,リン酸鉄リチウムの合成を試みた結果,リチウム塩共存のもと水熱条件下で,リン酸鉄のリン酸鉄リチウムへの転換が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の内容を進展させ,より高選択的な資源回収プロセスを見出すことができた。当初の研究計画からは若干副次的な成果を含むものの,概ね予定通りの研究成果が得られており,順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度から平成28年度においては,各種の酸性溶液を用いた銅水砕スラグからの成分溶脱挙動,成分溶脱機構について検討を行った。その結果,銅水砕スラグからの抽出成分による機能材料合成の可能性や,高選択的な抽出方法についての知見を得た。今後はこれらの研究を継続するとともに,昨年度までの成果発表を実施し,また酸抽出を中心とした銅水砕スラグの資源循環プロセスを提案していく。
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Causes of Carryover |
研究の進行具合ならびに学内の機器整備計画との兼ね合いから,多孔質シリカの吸着性評価に用いる予定であった吸光分光光度計の購入を見合わせ,主に試薬・器具類の購入,学会参加旅費等に充てた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分は,新規の資源利用プロセスの開拓のための試薬購入費ならびに器具装置購入費に充てる。特に再資源化で得られた各種材料の評価に用いる器具装置の購入にある程度の予算を割り付ける予定である。
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