2015 Fiscal Year Research-status Report
不凝縮気体を含む水の蒸発機構の解明に関する非平衡分子動力学解析
Project/Area Number |
15K21583
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
矢口 久雄 群馬工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (20568521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蒸発係数 / 分子動力学 / 気液界面 / 表面吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
GPGPUを用いた多成分系分子動力学プログラムによって,アルゴンの気液二相系にネオンを不純物として混入させた際の平衡状態を実現し,アルゴン液膜に対するネオン分子の表面吸着(表面過剰)や気相および液相の密度などを求めて,単原子2成分系の基礎データを取得した.その結果,ネオンの混合比率が高くなるにつれて,ネオン分子の表面吸着量は大きくなり,密度遷移層の厚さも大きくなることが確認された.これは表面吸着されたネオン分子が増えることで気液界面近傍のアルゴン液相の分子への相互作用が大きくなるためと考えられる.さらに,この気液平衡系において気相側に真空境界条件を適用して真空蒸発シミュレーションを実行することで蒸発係数の評価を行った.ここで,真空蒸発の経過とともに表面吸着量や液相中のネオンの混合比率が一定に維持されないことが明らかになったため,本研究では短い時間でのシミュレーションでの重ね合わせによる評価を行った.その結果,不純物であるネオンの混合比率が大きいほど,アルゴン分子の蒸発係数は小さくなるという結果が得られた.これらの知見は今後の水の蒸発係数の決定に向けた展開の基礎となる.一方,水分子を用いた分子動力学シミュレーションに関する基礎的な準備として,気液2相平衡系における気相および液相の状態について,従来から広く用いられている水分子モデルであるTIP3PおよびTIP4Pと本研究で採用する6サイトモデルとの比較を行った.その結果,気液平衡状態において,蒸気密度については従来モデルであるTIP3PやTIP4Pの方が実験値に近く,液相密度については6サイトモデルが従来モデルよりも実験値に近い値を与えることを確認した.蒸発係数は平衡状態と真空蒸発の双方の質量流束に依存するため,分子モデルの違いによる蒸発係数への影響については継続的に検討を進める必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画課題に関わる基礎的な検討をおおむね順調に終えることができ,次の進展に必要となる知見が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に開発した分子動力学シミュレーションのプログラムおよび解析手法を基盤として,水の真空蒸発シミュレーションを実行し,不純物の混合比率に応じて蒸発係数がどのように変化するのかを明らかにしていく.また,水分子モデルの違いによる影響についてもあわせて検討を進める.なお,現在は真空蒸発の経過とともに表面吸着量や液相中の不純物の混合比率が一定に維持されないために,短い時間でのシミュレーションでの重ね合わせによる評価となっているが,データ取得をより効率的に行うために,液相および表面における不純物の状態を維持するシミュレーション手法の開発にも取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
当初の計画ではGPGPUのTeslaK40の導入に主な予算をあてる予定であったが,当該年度において,TeslaK40よりも性能の高い新モデルが次年度にリリースされることが判明した.基金である本助成金は繰り越し可能であるため,費用対効果を考えた結果,当該年度のTeslaK40の購入を見合わせて次年度の新モデルを導入する方が研究遂行に有利であると判断した.なお,それまでの計算リソースとしては現有の旧モデルTesla2070Cを使用しており,研究計画の遂行に大きな遅れは生じなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に繰り越した予算によって最新の科学技術計算用GPGPUであるTeslaK80を導入して研究を加速させるとともに,当初の次年度計画にあったデータ処理用の計算サーバーも予定通りに導入する.
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