2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ・メゾ組織制御による高強度粒子分散強化合金の創製と強化機構の実験的解明
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15K21593
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
岩田 憲幸 久留米工業高等専門学校, 材料工学科, 准教授 (40397534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械的合金化 / 粒子分散強化合金 / 衝撃特性 / 引張延性 / 雰囲気影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
合金設計や粉末プロセス環境条件を改善することにより、Al添加鉄基粒子分散強化合金の高強度化を図ることを目標とした。先ず、機械的合金化(Mechanical Alloying: MA)処理中に合金粉末に混入する過剰酸素(Excess Oxygen: Ex.O)とN2が強度に及ぼす影響を調査するため、O, N量を制御したArガス雰囲気下でMA処理後、1150℃で熱間押出により固化成形し、Ex.O量やN量の異なる2種の合金を製造した。成分は16Cr-4Al-0.1Ti-0.3Y2O3で、Ex.O量はそれぞれ、Low Ex.O材が0.15wt%、High Ex.O材が0.46wt%である。シャルピー衝撃試験を行った結果、Low Ex.O材の衝撃特性は、High Ex.O材に比べ、向上することが判明した。すなわち、固化体中に含有するEx.O, N量が少なくなると、合金内に形成される酸化物や窒化物などの析出量やサイズが減少し、衝撃特性が向上している。次に、種々のMA雰囲気ガスや第三元素の添加が延性に及ぼす影響を調べるため、ArおよびH2ガス雰囲気下でMA処理後、1150℃で真空加圧焼結により固化成形し、MA雰囲気ガスの異なる2種の合金を製造した。成分は15Cr-2W-4Al-0.8Zr-0.35Y2O3である。ここでは、第三元素としてZrを添加した。室温および700℃で引張試験を行ったところ、いずれの試験温度でも、H2ガス雰囲気下MA処理材の引張変形伸びは、Arガス雰囲気下MA処理材に比べ、約2倍に増大することを明らかにした。すなわち、H2ガスを雰囲気としたMAプロセスは、合金粉末中へのArの取り込みを完全に防ぐことができ、かつ還元性雰囲気であるため、固化成形時に合金内の旧粉末粒界での酸化を抑制し、その結果、粗大な酸化物などの介在物形成が抑えられるため、引張延性が増大すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、合金設計や粉末プロセス環境条件を改善することにより、Al添加鉄基粒子分散強化合金の高強度化を図ることを目標とした。N2ガスを雰囲気としたMA処理プロセスの包括的な実験調査を目的として、MA雰囲気ガス中のO, N量を制御した合金を製造し、固化体中に含有するEx.O, N量を低減させることで、衝撃特性の向上を図ることができた。これは、これまでの知見と一致しており、ナノ・メゾ組織制御による強化機構を実験的に解明するための重要な指針が得られた。さらに新たな合金設計の基本方針として、第三元素にAlよりも酸素親和性が高く、Y2O3酸化物の凝集を妨げる元素であるZrを選定した。また、H2ガスを雰囲気としたMAプロセスを施して製造した合金の室温および700℃における引張延性を評価した結果、従来のArガスを雰囲気としたMAプロセスを施して製造した合金に比べ、強度特性の優れた高性能の粒子分散強化合金の創製に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果で特に重要な点は、H2ガスを雰囲気としたMAプロセスを施すことで、室温および700℃における引張延性が大幅に増大した点である。これは、固化体中にArバブルが存在しないことだけでなく、H2が合金内での介在物形成の抑制に作用することを示唆しており、一層のクリープ強度向上が期待される。今後は、引張強度および全伸びの温度依存性の評価に重点を置きつつ、ナノ・メゾスケールでの微細組織観察と構造解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、粉末プロセスで使用する特殊仕様の雰囲気制御容器の購入を予定していたが、予想以上に納期に時間を要することが明らかとなり、購入予定同等品を他機関より借用することができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として、粉末プロセスで使用する特殊仕様の雰囲気制御容器、引張試験片作製時に真空焼鈍を行うために使用する小型高真空排気装置を購入する。旅費として、国際会議に積極的に参加して研究成果を発表し、関連分野の研究者との議論を交わして交流を図る。
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