2015 Fiscal Year Research-status Report
ターゲットに粉体を用いたスパッタリング成膜とそのプロセスプラズマ反応機構解明
Project/Area Number |
15K21595
|
Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
大島 多美子 佐世保工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00370049)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 粉体ターゲット / スパッタリング / アルミニウムドープ酸化亜鉛 / 透明導電膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スパッタリング法において通常のバルクターゲットでは作製が困難な低融点有機薄膜および多元素複合薄膜を安価で容易に作製するため、粉体をそのままターゲットとして利用する薄膜作製技術の開発を目的とし、平成27年度はまず、各種プラズマ計測に必要なポートを備えた真空容器を設計し製作を行った。次に、透明導電材料として注目されているアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)薄膜を作製するために、ZnO、Al2O3、Alなど複数種の粉末を様々な重量比で混合させた粉末をターゲットとして用い、透明かつ低抵抗なAZO薄膜の作製を試みたところ、次の結果が得られた。 (1)混合粉体の組み合わせでは、ZnO:AlよりもZnO:Al2O3で結晶性かつ低抵抗なAZO薄膜を作製することができた。 (2)ZnO:Al2O3混合粉体の重量比では、ZnO:Al2O3=96:4wt%で低抵抗なAZO薄膜を作製することができた。結晶構造解析については重量比による変化は見られなかったが、ホール効果測定の結果、他の重量比に比べてZnO:Al2O3=96:4wt%で高いキャリア密度を示した。 (3)(1)で0.70Ωcm、(2)で0.51Ωcmと抵抗率の改善が見られたが、透明導電膜に必要な特性(10^-3Ωcm以下)には至っていない。そこで、(2)に更にAlを添加しZnO:Al2O3:Al混合粉体を用いて抵抗率の改善を試みた結果、Alを10%添加したときに0.020Ωcmまで低下し、可視光透過率は90%以上を得た。更にAl添加量を増やすと抵抗率は低下したが、堆積した薄膜は金属膜に近づき可視光透過率は低かった。 他にも、薄膜堆積中に発生するプラズマの発光分光計測を行い、AZOバルクターゲットを用いた場合と同様に、ZnIやAlIの発光が確認された。また、Al添加量を増加するとAlIの発光スペクトルおよび強度が大きくなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である低融点有機薄膜および多元素複合薄膜の作製に関して、平成27年度に混合粉体を用いたAZO薄膜の作製とその評価、ならびにプロセスプラズマの計測から成膜のノウハウや基礎的な知見を得ることができた。よって、平成28年度には目的とする材料について薄膜の作製を行うとともに、粉体ターゲットスパッタリングプロセス中の成長反応機構解明に着手することができると考え、おおむね研究は順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、低融点有機薄膜の材料として有機ELに用いられるAlq3を、多元素複合薄膜の材料としてBIGやAZOを用いる。これらの粉体ターゲットによる薄膜の作製を試み、バルクターゲットでは作製が困難な材料が粉体を用いることで可能になることの検証を行う。 また、粉体の粒子サイズや密度などが固体と異なることから、粉体ターゲットスパッタリング生成プラズマの計測を行うことでプロセス中の成長反応機構解明を試みる。
|
Causes of Carryover |
物品費は、プロセスガス、粉体ターゲット材料、基板が既存のもので賄うことができたため、支出額は交付額より87,956円少なくなった。 旅費は、佐世保-東京間を2回予定していたが、佐世保-名古屋間が2回になったため、支出額は交付額より11,660円少なくなった。 その他は、論文投稿料等として100,000円を予定していたが、実際には別刷りやカラー印刷を付けなかったため34,000円で済んだ。残りを国際会議参加費に充てた結果、支出額は交付額より31,000円少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は物品費の交付予定額が150,000円と少ないため、次年度使用額の130,616はプロセスガス、粉体ターゲット材料、基板の購入を行うために、物品費として使用する。
|