2015 Fiscal Year Research-status Report
下水処理プロセスにおける薬剤耐性菌の不活性化:下水道は耐性遺伝子のプールなのか?
Project/Area Number |
15K21596
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
古川 隼士 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 助教 (90632729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性遺伝子 / バンコマイシン耐性菌 / 最小発育阻止濃度試験 / リアルタイム定量PCR / 下水処理場 |
Outline of Annual Research Achievements |
下水処理場の各処理過程における薬剤耐性菌とその耐性遺伝子の挙動と消長を明らかにするために,大分県内の下水処理場(標準活性汚泥法)を対象に,2015年6月から毎月1回の調査を継続して実施している。昨年度までに合計10回の調査を実施した。 下水処理過程を経ることで,従属栄養細菌は3log以上の除去率を示したが,塩素消毒槽からも依然として105~106 cfu/100 mLの濃度で検出された。一方で,ふん便汚染の指標細菌とされる大腸菌および腸球菌は効果的に削減されることを確認した(塩素消毒槽での濃度:10 cfu/100 mL程度)。各処理槽から単離・回収した従属栄養細菌株について,抗生物質バンコマイシン(VCM)を対象に,最小発育阻止濃度(MIC)試験を実施し,VCM濃度128 μg/mLに対して耐性を有する菌株が高頻度で検出されている。各水試料から抽出したDNAを用いて,リアルタイム定量PCRによるVCM耐性遺伝子vanA,vanB遺伝子を定量したところ,各耐性遺伝子は下水処理過程において削減される傾向を示さなかった。また,汚泥試料中からも高濃度で検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにおいて合計10回の下水処理場における調査を実施しており,今年度も継続する。これまでに,各調査日の各下水および汚泥試料から従属栄養細菌株を単離・回収し,凍結保存している。また,各試料から抽出したDNAについても凍結保存し,耐性遺伝子の定量を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の下水処理場における調査を継続する(2016年6月まで)。現在,凍結保存している従属栄養細菌株についてMIC試験を行い,薬剤感受性を明らかにしていく。対象とする抗生物質は,バンコマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,エリスロマイシン,シプロフロキサシンとする。また,すべての下水および汚泥から抽出したDNAを用いて,VCM耐性遺伝子の定量を行い,下水処理過程における薬剤耐性菌とその耐性遺伝子の挙動と消長を明らかにしていく。
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