2016 Fiscal Year Research-status Report
確率過程の統計推測理論と高頻度観測データ解析への応用
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15K21598
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
荻原 哲平 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 助教 (40746426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非同期観測 / マイクロストラクチャーノイズ / 疑似尤度解析 / 最尤型推定量 / ベイズ型推定量 / 確率過程 / 高頻度データ / 漸近有効性 |
Outline of Annual Research Achievements |
拡散過程の非同期・ノイズ付観測モデルにおいて、潜在拡散過程がブラウン運動で記述されるシンプルな場合に二株式間の共変動に対する最尤型推定量の漸近分散が最小になることを昨年度までの研究で明らかにした。本年度は、最尤型推定量の漸近分散に関して抽象的に与えられていたその表現をより具体的な計算が可能な解析的表現へと書き換え、潜在拡散過程がブラウン運動のシンプルな例において漸近分散を計算した。またセミパラメトリック・モデルにおける漸近的最適性を達成しているBibinger et al. (2014)の推定量と最尤型推定量の漸近分散を比較して、時間依存の拡散係数を持つモデルにおいて最尤型推定量の漸近分散がより小さくなり、推定誤差を抑えられることを明らかにした。この成果によりセミパラメトリック・モデルとシンプルなパラメトリック・モデルの最良漸近分散がどのような条件の下で異なるかを明らかにすることができた。 また、潜在拡散過程が確率ボラティリティ・モデルで表現されるモデルは計量経済学における最も重要なものの一つだが、このモデルは隠れ変数を含むため、最尤型推定量を直接計算することができない。しかし、シンプルなブラウン運動の最尤型推定量から共変動の推定量を構築し、上のモデルを含む一般の確率過程に適用した場合にも推定誤差を既存の推定量よりも抑えられることを数値的に確認した。 さらに、これまでの研究成果を国内外の複数の学会において発表し、様々な研究者と情報交換を行って研究成果を改善させていき、論文を執筆して国際ジャーナルへ投稿して改訂作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測ノイズが正規分布でない場合の極限定理や、ノンパラメトリック型推定量との共変動推定の比較も当初の想定通りに行うことができ、国際会議での発表や論文執筆も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初米国株式市場のデータによる分析を想定していたが、データ使用変更の影響で困難となったため、日本株式市場のデータを用いた実証分析を進めていく。本研究の推定手法を用いてボラティリティ・共変動・観測ノイズの大きさなどの推定値を算出し、その特性を分析する。特に従来の日次以上のデータにおけるリスク量との時系列変化の大きさや推定の安定性の比較を行う。 また、引き続き、最尤型推定量が計算できない計量経済学の重要なモデルの一つである確率ボラティリティ・モデルに対して適用可能な推定量の研究を続けていく。推定量の一致性、漸近混合正規性等の性質を研究し、これらの性質を示すために必要な観測ノイズや観測頻度に関する条件等を特定していく。
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Causes of Carryover |
ニューヨーク証券取引所により、米国株式市場における高頻度金融データの購入を予定していたが、当該取引所のデータ提供形式の大幅な変更に伴い、現段階での購入が適切でないと判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本株式市場における高頻度金融データが利用できる環境になったので、提案手法の計算機実装に係る費用として利用する予定である。
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