2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21602
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
菅原 翔 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, NIPSリサーチフェロー (80723428)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶定着 / 運動学習 / 機能的磁気共鳴画像 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、記憶定着を予測する学習中の神経科学的兆候を同定し、その神経科学的兆候を学習過程への介入によって操作することで、記憶の定着を最大化することである。本年度は、第1段階である記憶定着を予測する学習中の神経科学的兆候の解明を目的として、機能的磁気共鳴画像を用いた実験を実施した。具体的には、系列運動学習時の神経活動と後の記憶定着の関連性を明らかとするため、学習中に起こる神経活動に干渉を与える一定速度条件を加えた干渉群と、最大速度条件のみで学習を行う統制群を設定した。結果として、記憶定着を反映する睡眠後の成績上昇は、統制群では顕著に示される一方、干渉群では認められなかった。この結果は、一定速度条件を加えたことによって記憶定着に重要な神経活動に変化が生じ、後に起こる記憶定着が阻害されたことを示唆している。これらの成果について、平成27年度の北米神経科学会において発表を行った。本実験では機能的磁気共鳴画像により学習中の神経活動を同時に計測しているため、これらのデータから干渉群が学習時の神経活動に与えた影響について解析を現在実施中である。干渉群で影響を受けた学習時の神経活動を明確にすることにより、後の記憶定着に重要な学習時の神経兆候を明らかにすることができると考えられる。本研究の成果が展開されることにより、運動技能の記憶定着を予測する神経科学的兆候を指標とし、記憶定着を最大化する学習方略を開発することが十分に期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、記憶定着を予測する学習中の神経科学的兆候を同定し、その神経科学的兆候を学習過程への介入によって操作することで、記憶の定着を最大化することである。そのため本年度は、第1段階である記憶定着を予測する学習中の神経科学的兆候の解明を目的とし、機能的磁気共鳴画像を用いた実験を行う計画であった。生理学研究所の2台の3T-MRI装置を利用することにより、2日間連続した機能的磁気共鳴画像実験を、当初の予定通りに完了した。これらの実験によって得られたデータについて、行動学的な検討は既に完了し、国際学術集会において成果を発表済みである。また、機能的磁気共鳴画像に基づく神経活動の解析も順調に進行しており、学習に伴う神経活動変化についての標準的な単変量解析は完了している。本研究ではこれらの単変量解析に加えて、神経活動の空間的パターンに着目する多変量解析も実施する計画であるが、現状では完了していない。従って、当初の計画は「おおむね順調に進展している」との自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果として、記憶定着を予測しうる学習中の神経科学的兆候の候補が明らかになりつつある。今後の方針としては、より詳細な解析によって神経活動に関するデータを早急に精査し、神経科学的兆候の候補を絞り込むことが極めて重要である。その上で、実時間で機能的磁気共鳴画像による神経活動計測を行うreal-time fMRIを利用し、記憶定着を予測する神経科学的兆候をモニターしながら学習量を制御する試みを行う。生理学研究所では、real-time fMRIを行う装置が磁気共鳴画像装置に既に接続されていたが、本年度新たに複雑な解析を実時間で行うためのセットアップを実装した。従って、本研究の最終目的である、神経科学的指標に基づいて学習量を制御するための実験環境は既に整っている。現状では神経科学的兆候の同定が律速段階であるため、年度末に購入した高性能PCを活用し、神経活動の空間的パターンに基づく多変量解析をスピードアップしていく。
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Causes of Carryover |
年度末に購入した一部の物品の支払いが、翌年度に繰り越しになってしまったため、 次年度使用額として繰り越しが生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに本年度の助成金については、物品の購入および納品が完了しており、 翌年度4月時に支払いが完了できる状況である。
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Research Products
(5 results)