2016 Fiscal Year Research-status Report
胎児期ヒ素曝露により多世代にわたり増加する肝腫瘍への細胞老化の関与
Project/Area Number |
15K21611
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
岡村 和幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 研究員 (50736064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒ素 / 多世代影響 / 細胞老化 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、妊娠期ヒ素曝露を行ったC3Hマウスの孫世代(F2)肝腫瘍組織において、対照群の肝腫瘍組織と比較して細胞老化マーカーp15の遺伝子発現量が有意に増加していることを見出した。そこで、平成28年度はまず、その誘導経路を検討した。その結果、妊娠期ヒ素曝露を行ったF2の腫瘍組織においてTgf-β1、Tgf-β receptor1、 Tgf-β receptor 2の遺伝子発現量が、対照群の腫瘍組織と比較して有意に増加していた。特にTgf-β receptor2の遺伝子発現量はp15の遺伝子発現量と非常に高い相関を示した。このことから、p15の遺伝子発現の誘導にはTgf-β経路が関わっている可能性が示唆された。また、p15の肝臓組織内での局在を明らかにするために、細胞膜マーカーの免疫染色の条件を検討し、pan-Cadherin抗体を使用した最適な条件を確立した。肝星細胞マーカーであるdesmin、細胞膜マーカーであるpan-Cadherinを用いてp15が発現している場所がどこであるか、ミラー切片を用いて現在検討中である。 一方で、細胞老化の誘導へのテロメアの関与を明らかにするために、テロメア長の測定およびテロメラーゼ活性の測定方法を確立した。特にテロメラーゼ活性の測定に関しては、タンパク質量およびPCRのサイクル数を検討し、至適条件を見出した。現在、妊娠期ヒ素曝露を行ったC3Hマウスの仔世代(F1)およびF2の74-82週齢肝臓組織から抽出したゲノムDNAおよびタンパク質を用いて、テロメア長およびテロメラーゼ活性を検討中である。 また、次年度計画である経時的な変化を観察するために、母マウス妊娠18日目において、F1、F2胎児から肝臓を得、テロメア長の測定およびテロメラーゼ活性の測定に必要なDNA、タンパク抽出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、昨年度必要性が生じた細胞膜を染める免疫染色の最適条件を検討した。細胞膜マーカーとしては昨年度購入したNa,K-ATPaseの検討をしたが、最適な染色条件を見出すことは出来なかった。一方、pan-Cadherin抗体を用いて、EDTAを含むpH9のbufferを用いて賦活化することで、細胞膜特異的な蛍光を観察することが出来た。今後はp15と星細胞マーカーdesmin、p15とpan-Cadherinの組み合わせでミラー切片を免疫染色することで、p15の局在を明らかにする。一方、他の細胞老化マーカーとしてHP-1γ、ヒストンH3K9me3の局在を検討したが、最適な染色条件を見出すことは出来なかった。 また、74-84週齢におけるp15の遺伝子発現誘導に関わる経路として遺伝子発現量の相関関係を検討し、Tgf-β経路による誘導の可能性が高い事を明らかにした。 そして、テロメア長の測定のための予備検討を行い、Real-time PCR法によるテロメア長の測定方法を確立した。さらにテロメラーゼ活性に関してはELISA法による測定条件を確立した。加えて、平成29年度に検討を行う週齢のF1,F2マウスから肝臓を得、DNA抽出およびタンパク調製が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はミラー切片を用いてp15の局在を検討し、最終的な結論を出す。また、昨年度までに調製したサンプルを使用して、テロメア長およびテロメラーゼ活性を測定することによって、妊娠期ヒ素曝露によって後発的に増加する肝腫瘍の際に誘導される細胞老化へのテロメアの寄与を明らかにする。 さらに、alternative lengthening telomereに関わる遺伝子の発現変化に加え、テロメア以外の細胞老化に寄与する酸化ストレスやDNA損傷修復関連遺伝子の発現を検討し、多角的に細胞老化がおこる要因の検討を行う。
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