2015 Fiscal Year Research-status Report
自家蛍光指紋分光法による病原性細菌の迅速検出手法の開発
Project/Area Number |
15K21619
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉村 正俊 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門食品分析研究領域, 任期付研究員 (10593725)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光指紋分光法 / 励起蛍光マトリックス / 病原性細菌 / 多変量解析 / 菌種判別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、蛍光指紋分光法によって食品に関連した病原性細菌を迅速に検出する手法の開発を目的としている。具体的な研究項目として、①蛍光指紋による菌種判別手法の開発、②蛍光指紋による菌数定量手法の開発、③ファイバープローブによる蛍光指紋計測と①②を組み合わせた迅速化のための多検体検査システムの構築、の3つを計画している。 このうち、平成27年度では、第一段階として、各種細菌の蛍光指紋を計測し、菌種毎の蛍光パターンを定義して蛍光指紋ライブラリを構築するとともに、蛍光指紋の類似性に基づいた菌種判別のためのアルゴリズムの開発を実施している。これまでの所、対象とする菌種で収集している30菌株程度を用いて、各種細菌の蛍光指紋を収集し、菌種および菌株の参照蛍光指紋として蓄積し、蛍光指紋ライブラリの構築を行っている。また、細菌の蛍光指紋を測定するための実験プロトコルに関連して、サンプル調製の迅速化のために、濃度を標準化するための濁度調整を半自動化するシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細菌の蛍光指紋を測定するための実験プロトコルに関して、懸濁液試料の調製において、サンプルの濃度を標準化するために濁度を調整する段階での労力が大きく、時間がかかることが課題の遂行において問題であった。 細菌の濃度としての濁度は、自家蛍光の強度に影響するため、データの安定性を得るためにはその精度が重要である。また、生体試料は時間とともに変化しやすく、サンプル調製後の迅速な測定が求められる。手動で濁度を調整するのは時間を必要とし、サンプル調製に時間がかかると、データが不安定になり、ライブラリとしての信頼性が落ちる。機器分析による菌種判別手法としてはライブラリの信頼性が重要であるため、サンプル調製の迅速化を目的として、細菌懸濁液の濁度調整システムを構築した。同システムは分光光度計・超小型スターラー・シリンジポンプ・制御用 PC から構成される。自作の制御プログラムにより、濁度をモニタリングしながらポンプで細菌懸濁液を送液し、目標濁度に到達した時点で停止する。目標とする濁度に応じて、流速などのポンプ制御パラメータを適切に選択することにより、迅速かつ高い精度での調整が可能となり、これによって蛍光測定のためのサンプル調製が大幅に迅速化および省力化された。次年度以降、同システムを導入して測定回数の増加およびライブラリの拡充に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、第二段階として、各種細菌の増殖過程において一定時間毎に蛍光指紋および生菌数の計測を行い、多変量回帰分析によって、蛍光指紋による菌数定量のためのアルゴリズムを開発する。具体的には、検出対象とする各種細菌の増殖過程において、一定時間毎に測定した蛍光指紋を説明変数、コロニーカウント法などで測定した生菌数を目的変数とし、PLS 回帰分析などの多変量解析手法によって、蛍光指紋から各種細菌の生菌数定量モデルを構築する。 また、平成27年度に実施している各種細菌の蛍光指紋ライブラリについても、菌種および菌株の増加や菌種判別精度の向上のため、引き続き拡充を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、人件費として計上していた経費が未使用だったためである。同経費は、細菌を扱う実験における実験補助員を雇用するために計上していたが、平成27年度においては適切な実験補助員が見つからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、上記実験補助員に適切な人材が見つかっているため、人件費として使用する。
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