2015 Fiscal Year Research-status Report
NF-kB活性の振動とスイッチライク応答における制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K21624
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井上 健太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 特別研究員 (80708529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | NF-kB / システム生物学 / モデリング / シミュレーション / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子NF-kBの活性は細胞外刺激に応答して、その活性ダイナミクスが振動を引き起こすこと、細胞外刺激濃度に応じて活性がON/OFFに変化するスイッチライク応答を引き起こすことが知られている。この振動とスイッチライク応答がどのような分子メカニズムで制御されているかを微分方程式の数理モデルを構築して、感度解析・分岐解析を行った。感度解析により、振動とスイッチライク応答に感受性の高い反応を同定した。これらの感度の高い反応は振動とスイッチライク応答で共通する反応と異なる反応が見られた。次に、モデル内のタンパク質濃度を変化させて、振動とスイッチライク応答が起きるかどうかを解析した。その結果、振動とスイッチライク応答の両方が見られる状態、振動だけが見られる状態、スイッチライク応答だけが見られる状態、両方見られない状態の4つのパターンがあることが推定された。ここまでは数値解析で予測されたが、理論的にもその4つのパターンがあるかを分岐解析で検証した。この検証には、振動とスイッチライク応答に感受性の高い分子と反応に絞り込んだシンプルモデルで解析した。分岐解析においても、タンパク質濃度の変化が同様の結果を引き起こすことが示された。これらの解析をノックアウトや過剰発現による細胞実験で検証したところ、モデルによる予測と一致した。次に、振動は遺伝子発現の調節に重要であることが知られているが、スイッチライク応答しなくても振動するのであれば、スイッチライク応答は振動にどのような影響を与えているかを解析した。その結果、スイッチライク応答が振動の振幅に影響し、それが遺伝子発現に影響するのではないかと示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NF-kB活性の振動とスイッチライク応答の関係を数理モデルを使って解析し、その解析で推定された現象を実験的に検証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究成果を論文としてまとめて発表する。また、モデルパラメタがオーバーフィッティングしている可能性を考慮して、実験を再現できるパラメタを広いパラメタ空間から探索して、パラメタに依存しないNF-kBモデルから推定される現象の検討と、振動とスイッチライク応答を変化させることができるパラメタから実験検証できるパラメタの探索を行う。
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Research Products
(4 results)