2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21626
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仙石 徹 国立研究開発法人理化学研究所, 横山構造生物学研究室, 研究員 (60576312)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 阻害剤開発 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
KDM6Aはトリ/ジメチル化ヒストンH3 Lys27(H3K27me3/2)特異的脱メチル化酵素であり、多細胞生物の発生・分化において中心的役割を果たす。KDM6Aの変異やH3K27me3レベルの異常は様々な疾患に関係している。本研究では、KDM6Aの時分割X線結晶構造解析と阻害剤スクリーニングを行い、i) KDM6Aによる反応触媒機構の解明、ii) 生物学的・医学的に有用なKDM6特異的阻害剤の開発を目指す。 ・これまでにin vitroアッセイの結果から得られていたKDM6阻害剤候補化合物について、細胞アッセイによる絞り込みを行った。ある種の脳幹グリオーマ細胞ではグローバルなH3K27me3レベル低下が見られ、それによる遺伝子発現異常ががんを引き起こすと考えられている。そのため、この種のグリオーマに対してH3K27脱メチル化酵素阻害剤を用いたH3K27me3レベル回復による治療戦略が提唱されている。我々が同定した8種類のKDM6阻害剤候補化合物を用い、その存在下でグリオーマ細胞株を培養したところ、1種類の化合物が増殖を抑制することを見出した。 ・KDM6の時分割X線結晶構造解析を行う際には、反応条件検討のためにKDM6Aとヒストンペプチドとの複合体の結晶が大量に必要となる。これまで使用していたKDM6Aの発現系は収量が十分でなかったため、新しい発現系を構築した。N末端側にSUMOを融合させた発現系を用いて、大腸菌における収量を数倍向上させることに成功した。この発現系から得られたKDM6断片の結晶化を行い、以前と同様の結晶化条件で結晶が得られることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
阻害剤開発については、細胞レベルで活性を持つ化合物を見出している。時分割X線結晶構造解析については、大量にKDM6A-ヒストンペプチド複合体結晶を得られる条件が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
阻害剤開発については、まず候補化合物の添加による細胞内のH3K27me3レベル変化を確認する。また、KDM6Aと候補化合物との複合体の結晶構造解析を行う。時分割X線結晶構造解析については、KDM6A-ヒストンペプチド複合体結晶を大量に調製した後に、結晶内反応開始条件の検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度はすでに得られていた阻害剤候補化合物の検証に注力し、新規候補化合物とin vitroアッセイ用試薬(AlphaLISA試薬)を購入しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在得られている候補化合物の類似化合物を新規に購入し、その活性をin vitroアッセイで検証するためのアッセイ用試薬も購入する予定である。
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