2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子制御ネットワークを用いたアトピー性皮膚炎発症制御マイクロRNAの網羅的同定
Project/Area Number |
15K21631
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川上 英良 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 特別研究員 (30725338)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子制御ネットワーク / 転写因子 / マイクロRNA / アトピー性皮膚炎 / Gene set enrichment解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、遺伝子発現変動から制御因子を網羅的に予測する手法を開発した。転写因子の遺伝子制御領域への結合を網羅的に測定したChIP on chipやChIP-seqのデータを世界中から3500実験以上集めて再解析を行うことで、転写因子と標的遺伝子間の制御ネットワークである「遺伝子制御ネットワーク」を構築した。さらに、従来のGene Set Enrichment解析に確率的な制御関係を考慮したwPGSA法(weighted Parametric Gene Set Analysis)を考案・導入することで、遺伝子発現変動データから450種類以上の転写因子の活性を極めて高い精度で予測することに成功した(Kawakami et al. Nucleic Acids Research 2016)。この手法をアトピー性皮膚炎モデルマウスの経時的トランスクリプトームデータに適用することで、皮膚炎発症過程における転写制御メカニズムが明らかになりつつある。wPGSA法は膨大なデータを重みとして取り入れて予測に利用できる点を特長としており、転写因子以外にもmiRNAの制御予測にも活用できると考えられる。また、ヒト性状皮膚角化細胞(NHEK細胞)を、皮膚炎誘導低分子化合物(MC903, イミキモド、polyI:C)で処理したときのmRNA発現変動およびmiRNA発現変動をRNA-seqにより網羅的に定量した。miRNAのターゲット予測に関しては、複数のデータベースの予測結果を統合することで精度を向上したネットワークを構築した。また、mRNA-miRNAの共発現データを使ったmiRNAターゲット予測のアルゴリズムを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はmiRNAによる制御に着目してアトピー性皮膚炎における遺伝子制御メカニズムを明らかにしていく予定であったが、wPGSA法を確立したことにより、従来明らかでなかった転写因子による制御も明らかになった。wPGSA法による転写因子の活性予測は、アトピー性皮膚炎に限らず、細胞分化や疾患において、今まで知られていなかった転写因子の関与を明らかにしており、現在10以上の実験研究グループと共同研究を行っており、制御メカニズムの解明を強力に促進している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、mRNA-miRNAの共発現データを使ったmiRNAターゲット予測のアルゴリズムを確立する。miRNAは不完全な相補性をもって作用し、特性が複雑なためターゲット予測は未だ研究途上にある。統計的因果予測の手法を用いて、共発現データからmiRNAによる制御を抽出する。構築したmiRNAによる遺伝子制御ネットワークとwPGSA法を組み合わせることで、既に取得されているNHEK細胞のトランスクリプトームデータから、転写因子とmiRNAによる包括的な遺伝子制御メカニズムのモデルが構築できると考えられる。また、転写因子とmiRNAの遺伝子制御ネットワークに対してネットワーク解析を適用することで、アトピー性皮膚炎の発症初期メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は制御因子の予測手法の確立という理論的部分に注力したため、実験部分は次年度に行うことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に確立した予測手法を用いて、ヒト性状皮膚角化細胞において遺伝子発現制御メカニズムの解明を行う。そのためのRNA-seq試薬、miRNAのinhibitor, mimicの購入費用として使用する予定である。また、次年度に関しては国際学会における発表や論文投稿を複数行う予定であり、それらにも使用する。
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[Journal Article] Network analyses based on comprehensive molecular interaction maps reveal robust control structures in yeast stress response pathways2016
Author(s)
Eiryo Kawakami, Vivek K Singh, Kazuko Matsubara, Takashi Ishii, Yukiko Matsuoka, Takeshi Hase, Priya Kulkarni, Kenaz Siddiqui, Janhavi Kodilkar, Nitisha Danve, Indhupriya Subramanian, Manami Katoh, Yuki Shimizu-Yoshida, Samik Ghosh, Abhay Jere, Hiroaki Kitano
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Journal Title
npj Systems Biology and Applications
Volume: 2
Pages: 15018
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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