2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代インシリコ創薬のための高解像度相互作用エネルギー空間分割法の開発
Project/Area Number |
15K21632
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
沖山 佳生 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (80536384)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フラグメント分子軌道法 / 自然結合解析 / エネルギー分割解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質をはじめとした生体高分子に対する高精度な量子化学計算を効率的に実行可能なフラグメント分子軌道法(FMO法)において、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE)は大規模分子内の局所的な安定性を評価可能な重要な解析ツールとなっている。さらにこのIFIEを、引力斥力の大きさのみならず、電子的メカニズムごとの成分分解(エネルギー分解解析;EDA)を行う、より詳細な結合情報に基づいた解析手法が注目を集めている。一方で、EDAを実施する際に非直交軌道を利用する場合、軌道の重ね合わせに由来する不定性が、特に電荷移動の定量的評価を困難にしていた。そこで本研究では、直交軌道を用いたEDA法であるNEDA法をFMO法と融合させることで、これまでのEDA法が持つ不定性を排除し、化学的描像に優れた成分分解を可能とする相互作用エネルギー解析手法を開発する。 このような目標を踏まえ、初年度は通常のMO法の枠組みにおけるNEDA法の実装に向けた開発を進めた。本研究の開発には申請者自身がこれまで開発に携わってきたFMO計算プログラムABINIT-MPを用いた。MO計算で得られた密度行列に対してAO→NAO→NBOと基底変換を行った後にNEDA法によるエネルギー分解が可能となるため、まずはNAO→NBOへの基底変換の実装から着手した(申請者はすでにAO→NAOの基底変換モジュールを作成し、さらにABINIT-MPプログラムを用いたFMO法への展開も実施済みである)。これにより、NBO法に基づくルイス構造や結合次数の評価とともにAO→NBO基底変換が可能となり、NEDA法実装のための準備が整った。また一方で、FMO法へのEDA法先行適用例であるPIEDA法は、NEDA法をFMO法へ展開するにあたり大いに参考になるため、PIEDA法の実装を並行して進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最大の要所のひとつであるNAO→NBO基底変換の実装が完了し、NBO基底に基づいた各エネルギー成分の評価を行うベースが整った。また、FMO法におけるエネルギー分解法の先行例であるPIEDA法の実装も完了し、本課題で導入するエネルギー分解法のFMO法への展開のための道筋を立てることができた。以上の状況を踏まえ、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
NEDA法に基づくエネルギー成分分解の実装を順次進める。FMO法への展開においては、フラグメント対が周囲のフラグメントによる静電環境場のもとすでに分極状態にあることを考慮し、分極エネルギー成分の取り扱いを注意しつつ開発を進める。またBSSEの取り扱いについても同様である。実装にあたっては、ベースとなるABINIT-MPプログラムのMPI/OpenMPハイブリッド並列性を考慮し、また必要な行列演算に対してBLAS/LAPACKルーチンを積極的に利用し高速化を図る。 実装後はエストロゲン受容体等の実タンパク質-リガンド複合体系を例題としてFMO/NEDA解析を実施し、異なる相互作用解析手法と比較しつつ開発手法およびプログラムの検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
計算機の入札等により、想定より安価に購入することができたことで端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額が小さいため、特に使用計画に変更はない。
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