2016 Fiscal Year Research-status Report
専門職の評価視点を反映した住環境整備プラン提案のためのリコメンダシステムの開発
Project/Area Number |
15K21635
|
Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
澤田 有希 帝京科学大学, 医療科学部, 助教 (40747995)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 住宅改修 / 作業療法士 / 建築士 / 専門職 / 協働 / 多職種連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,クライアントや生活環境の多面的な評価結果を踏まえて,住環境整備プランを掲示できるリコメンダシステムの開発を目指している.そのために,研究2年目である平成28年度は,最終年度に向けて,住環境整備プランを立案するにあたり必要となる評価項目の重みづけ,および,システム開発に向けての準備を目的とした. 具体的には,まず平成27年度に実施したインタビュー調査の詳細な分析をし,排泄・入浴・外出の3つのニーズに基づく評価項目の網羅的な抽出にとどまらず,各専門職がどの評価項目に重みを置いているかを同定した.その結果,リハビリテーションの専門家と事業者・建築士はクライアントのニーズに重きを置いて評価を行っているものの,それぞれの専門職の視点から評価をし,詳細な評価項目については重みが異なった.リハビリテーションの専門家は今後どのように生活するか,改修を行ったらどのように使うかなどの「生活」に重きを置いて評価する一方,事業者は提供できる物品と疾患名・移動能力のマッチングから住環境整備プランを検討していることが明らかになった.この結果を参考に,システムの開発に向けたデータベースの項目だてについて検討した.次に,データベースに入れるべきデータの収集を実施した.データは,介護保険制度の理由書やすでに本や雑誌等で紹介されている事例報告等を収集した.収集した事例(データ)の記載項目にはばらつきがあったが,インタビューから同定した評価項目をもとに,事例(データ)から評価項目の評価結果を抽出した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である今年度は,初年度のインタビュー調査の詳細分析と最終年度のリコメンダシステム開発に向けたデータベースのためのデータ収集を中心に行った. インタビュー調査については対象者を増やす予定であったが,定性的な分析のみではデータベースに入れるべき大量のデータ収集は難しいと考えられ,現在あるデータについて詳細分析にとどめた.その結果,計画通りインタビューデータからは評価項目リストを作成し,専門職種による評価項目の差異(重みづけの差異)等は定性的に明らかにできた.また,評価項目リストに基づく,リコメンダシステムに向けた項目だてについても検討できた.よって,おおむね実施計画に沿い研究を遂行できた. また,住宅改修の理由書や事例報告等を収集し,住環境整備プラン(主に,介護保険制度における対象種目)が具体的にどのような対象者に適合されているのかを調査し,評価項目リストに基づく評価結果を抽出した.しかし,理由書や事例報告には記載されている評価項目にばらつきがみられることや,特に理由書の場合,住環境整備後の生活が改善されたか否かが不明であることからデータそのものの質の問題が発生した.評価結果と住環境整備プランの結びつきが適切かどうかの判断が困難であることが明らかになり,計画以上の進展ができなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究の中でリコメンダシステムを開発するにあたって,良質なデータを収集することの困難さが明らかになった.よい住環境整備とは何かについては満足度や介護負担の軽減,生活の維持・改善等,さまざまな視点から議論されている.本研究でその点まで踏み込むことは最終目的に向けた研究の方向性が異なり難しいと考えられる. 公表されている理由書や事例報告は,今後の参考することを目的に公表されているものであるため,今回,すでに収集した理由書や事例報告についてはよいデータとみなし,使用した上でシステム開発そのものに重点を置くことにした. 具体的には,理由書や事例報告から抽出した評価結果をもとにデータベースを作成し,システムの構築をする.構築したシステムについてその有用性を検証する.また,システム構築にあたりデータベースのデータが不足する場合には,さらなるデータ収集に向けて,初年度のインタビュー調査と事例報告の分析をもとにインターネット上で専門職に対して大規模アンケートを実施し,提示した事例の評価結果から住環境整備プランを想定してもらう. なお,本年度,産前産後休業および育児休業を取得することから,その後,研究期間の延長を予定している.そのため,システムの構築・有用性の検証については休業後実施の予定である.
|
Causes of Carryover |
2年目で予定していたインタビュー等の定性的調査を行わなかったことで,謝金や交通費,分析にかかる費用が掛からなかった.一方で,最終年度に実施するシステム構築にはパソコンやソフト代,構築にかかる人件費等,当初の予定よりも費用が掛かることが予想される.さらに,データの不足により大規模アンケートを実施する場合にはより費用がかさむことが予想される.そのため,本年度は,最終年度を見越して予算の使用を抑えた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に,システム構築にかかる人件費または依頼費用,パソコンソフト類の購入,システムを運用するパソコンの購入を予定している.また,データベース構築に必要なデータが不足する場合には大規模アンケート実施の費用および分析作業等にかかる費用予定している.さらに,構築されたシステムの有用性検証のための人件費や交通費および分析作業等に係る費用を予定している.
|