2015 Fiscal Year Research-status Report
中国農村における集団所有制改革の実態と評価―土地株式合作制の経済分析―
Project/Area Number |
15K21639
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山田 七絵 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 研究員 (10450537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土地株式合作制 / 大規模農業経営 / 所得分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代後半以降、中国農村はいわゆる「三農問題」、すなわち農家の零細規模経営とそれによる農業生産性の低迷、農村経済の停滞、農村と都市住民の所得格差の拡大に直面している。三農問題の背景には、独特の所有制度や経済制度の未整備によって生じる非効率と利益分配の不公平といった構造的な問題がある。本研究は、中国農村の市場経済化の過程で所有制度の問題を克服するためにボトムアップ式に生み出された経済制度の1つである土地株式合作制に注目する。そして現地調査を通じてその特徴を明らかにするとともに、地域経済の発展、所得分配の公平性の是正、農地の利用効率の向上に対する同制度の貢献を実証的に評価することを目的とする。 研究プロジェクト初年度の2015年度は、中国河北省の畑作地帯にて土地株式合作制を実施している農民専業合作社(生産者組織)10数社に対し、経営状態、農地の利用状況、利益分配の仕組み等に関するインタビュー調査を実施した。同時に、参加農家に対し農業経営、所得、農外就労の状況等に関するインタビューを行った。調査の結果、農家組織については組織化主体の性格によって組織目標、ガバナンス構造や経営状態が異なっていること、参加農家については、参加によって明らかに所得は増加しているが、所属する組織や組織内での会員種別によって所得に差があることが明らかとなった。 今年度の調査結果に基づき、土地株式合作制の特徴と参加農家への利益分配に関する英文原稿1本と、同制度に関する内容を含む和文報告書1本を執筆した。今後は英文原稿の海外ジャーナルへの投稿を目指す同時に、中国国内の他地域での調査も実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は当初の予定通り、生産者組織と農家に対するまとまったインタビュー調査を実施することができた。そして、調査結果に基づいて合計2本の英文・和文原稿を執筆した。以上より、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、中国北方の畑作地帯での土地株式合作制の実施状況を調査することができた。二年目は初年度の調査に基づいて執筆した英文原稿の海外ジャーナルへの投稿を目指す。 また、広大な中国では各地で異なるタイプの土地株式合作制が展開していると考えられるため、二年目以降は農業生産条件、経済社会条件の異なる地域で調査を実施し、比較対象とすることを予定している。同時に調査データのさらなる分析、論文作成の準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
所属機関の別のプロジェクトで、テーマは異なるものの同じ地域で調査を実施したことから、旅費や現地での人件費・謝金が節約できた。また、調査対象地の河北省の農村が交通の便利な位置にあったため、国内移動の交通費があまりかからなかった。以上の理由から、予定より少ない支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は比較対象として他の地域で2回程度農村調査を実施する予定であるため、初年度よりも多くの旅費、人件費等の支出が見込まれる。
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Remarks |
当研究プロジェクトの紹介、調査研究報告書は例年5月以降にウェブ掲載されます。
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