2015 Fiscal Year Research-status Report
政府によるメディア・コントロールに関する実証分析:インド・ビハ-ル州の事例
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15K21640
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
湊 一樹 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 研究員 (00450552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディア・コントロール / インド / 政治経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドでは近年、メディアの報道内容を大きく歪めかねない様々な圧力が見られるようになってきている。本研究では、民主主義の「第四の柱石」としてのメディアの役割を妨げる恐れのある、政府による報道内容への介入の実態とその背景を明らかにすることを目的としている。具体的には、「政府が大量の政府広告を新聞に掲載して、新聞社が政府広告からの収入に大きく依存するような状況を意図的に作り出すことで、権力側に都合の悪い内容が報道されないよう間接的に圧力をかけているのではないか」という仮説に従って、定性的分析と定量的分析の両面から検証を行い、これまで正面から取り上げられてこなかったメディア・コントロールの問題に新たな光を当てる。
今年度は、ビハール州で現地調査を行い、現地のジャーナリストや研究者に対して聞き取り調査を行った。その結果、ビハール州政権によるメディア・コントロールの戦略・手段・背景は、主に以下の3つにまとめられることがわかった。第1に、ラルー政権のもとで最も割を食ったのは上位カーストである一方、メディア関係者の多くは上位カーストの出身者である。そのため、ラルー前州首相を政権から追い落としたニティーシュ・クマール州首相とメディアの間で協力関係が生まれるのは自然なことである。また、ニティーシュとメディア関係者は、社会的・経済的な背景もある程度共有している。第2に、ニティーシュは、ジャーナリストに対して様々な便宜を与えて手なずけている。第3に、ニティーシュは、州政府の広告を使ってメディアに圧力をかけている。そして、以上の結果として、州政権にとって都合の悪い情報はメディアによって報じられることはなくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関での業務や本研究以外の研究プロジェクトなどの都合により、ビハール州での現地調査が2016年2月に一週間ほどしか行えなかったため、当初の予定よりも進捗にやや遅れが生じている。特に、データ構築作業を海外委託研究として実施する際の委託先の選定、さらに、委託作業の手順の具体化について、予定よりも進捗が遅れている。一方、現地関係者の聞き取り調査については、ほぼ予定どおりに進んでいるが、初年度以降もさらに聞き取りを重ねていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、現地関係者(メディア関係者やジャーナリスト、政治家、官僚、研究者など)への聞き取り調査を継続的に行っていく。また、聞き取り調査によって背景知識が不足していることが明らかになった点については、関連文献の収集とサーベイを追加的に行うことによって背景知識の不足を随時補っていく。この一連の作業を通して、定性的分析のための分析視角の明確化と定量的分析のための仮説の精緻化を進めていく。
現地関係者への聞き取り調査を進める一方、新聞に掲載された政府広告についてのデータ構築作業を海外委託研究として実施するための準備を進める。なお、期間内にどの程度までデータを構築できるかという点については、時間的制約と金銭的制約という2つの条件を十分考慮に入れておく必要がある。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも、現地調査の期間が短かったため。また、購入を予定していたノートパソコンを、平成27年度が初年度となる別の科研費で購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画よりも長期で現地調査を行う予定である。
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