2015 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中葉のミャンマーにおける首都形成:脱植民地化と「外国人」問題
Project/Area Number |
15K21641
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
長田 紀之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究員 (70717925)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域研究 / 東南アジア / ミャンマー / 都市 / 歴史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、ミャンマーの最大都市ヤンゴンがイギリス帝国の植民地都市から国民国家ミャンマーの首都へと変貌する過程を実証的に研究することを目的とする。対象時期は、植民地期末期の1930年代から日本占領期と1948年の独立をはさんで、社会主義軍事政権が成立する1960年代までである。 平成27年度は、1957-58年度と1960-61年度における企業住所録(入手済)のデータ入力作業を進めた。また、現地調査で新たに1956-57年度、1962-63年度の企業住所録も入手した。企業住所録には、ミャンマー各地の企業の住所、経営者、業種などが記載されているが、その圧倒的多数はヤンゴンに集中している。独立後のヤンゴン都市社会の変化には不明な点が多く、複数年度の企業住所録からは、この時期のヤンゴン経済界の人的構成や都市空間利用の変遷について、示唆的なデータセットが得られると見込まれている。 これまで、ヤンゴンの一部の街区(華人街)について、企業住所録以外のデータも含めて通時的に検討をしたところ、以下の暫定的な発見があった。1)植民地期末期(1920~1930年代)と1940年代末の独立時期を比較すると、1928年の中国風の名前を持つ登記企業828社のうち独立時期にまで存続しているのは10%未満である。2)独立後、1948年から軍事政権の成立する1962年までの、地片ごとの履歴をみると、大通り沿いに位置する約200区画のうち50区画の地片で同一企業の存続が確認された。3)企業住所録には、登記上の範疇である「中国企業」「インド企業」「ビルマ企業」などの区別も記載されているが、1950年代末から1960年代初頭にかけて、「中国企業」や「インド企業」が減少し「ビルマ企業」が増加し、いくつかの「中国企業」については企業名をそのままに「ビルマ企業」に登記しなおしている事例が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入手済みのデータの入力と、ミャンマー現地調査による独立後の企業住所録の入手など、ある程度順調に研究計画が進んでいる。 博士論文の出版計画も順調に進んでおり、平成28年度中に出版する目途がついている。また、博士論文の一部の内容を、いくつかの国際学会で発表した。 ただし、イギリスやインドへの出張と植民地期の関連資料の収集については、本務との兼ね合いで平成27年度中には実現できなかった。これについては次年度以降に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にしたがって研究を進めていく。 ただし、膨大なデータの入力にかかる時間が研究遂行上の難点となっている。これについては、入力作業の委託などの方策をとりうる。
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Causes of Carryover |
本務との兼ね合いにより、イギリスで予定していた海外調査が実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査費に予定していた金額の一部は、平成27年度に物品費として使用した。次年度使用額は、イギリスへの海外調査および課題として浮上したデータ入力の委託費として用いる予定である。
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Research Products
(13 results)