2015 Fiscal Year Research-status Report
中国・農民工支援NGOの活動に見る新時代の社会運動
Project/Area Number |
15K21642
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山口 真美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東アジア研究グループ, 研究員 (60450540)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 中国 / 労働NGO / 草の根NGO / 労働運動 / 農民工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国の都市部において出稼ぎ労働者の支援を行う草の根NGO(以下、労働NGOと表記する)の機能と社会的な位置づけを考察することにある。労働NGOを含む草の根NGOは、中国において1990年代後半に始まり、それ以降活発に活動している新しい社会組織である。労働NGOの主な活動内容は法律的手段による労働者の権利保護と労働運動の支援であり、主な担い手は労働者自身、及び大卒のソーシャルワーカーやメディア出身者、研究者などの市民である。研究手法は主に、文献調査、理論レビュー、専門家へのヒアリング、及び中国国内の労働NGOが活動する主な都市への労働NGO訪問調査による。 初年度であったH27年度は、文献調査として中国の労働NGOに関する日本語、中国語、英語の文献サーベイと中国及び香港の労働NGO、及び研究者へのヒアリングを実施した。今年度の労働NGO訪問先は、広東省の広州市と深セン市、北京市、河南省鄭州市、及び香港であった。ヒアリングによって、2010年以降、特に広東省の工場集積地を中心に農民工による労働運動が活発化しているが、多くの主要な運動の背後にはこれらの労働NGOによる体系的な指導があることがわかっている。他方で、中国の現体制下において、労働運動の合法性は十分認められておらず、12月には政府による主な労働NGO幹部の拘束と刑事逮捕という大きな事件が起きた。今年度の研究会成果は、拙稿「中国・草の根の労働運動―労働NGOの活躍と弾圧―」(『アジ研ワールド・トレンド』2016年5月号No.247 ,p.42-48)にまとめられている。来年度以降は引き続き労働NGOへの訪問調査を続けると共に、労働NGOによる労働運動への介入の事例研究を整理したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初計画では文献サーベイ、理論レビューと専門研究者へのインタビューを中心に、2年目移行の調査のための準備を予定していた。しかし、実際には研究者を訪ねた際に紹介を受けた労働NGOや、以前から知り合っていた労働NGOスタッフの紹介などで、初年度から労働NGOの現場を訪ね、インタビューを平行して行った。この背景には、ここ数年、労働NGOへの中国政府の締め付けが厳しく、今後の活動や調査が難しくなることが懸念されたことがある。実際、昨年度訪問した労働NGOの一つは代表者が年末に拘束、逮捕された。
|
Strategy for Future Research Activity |
以上のように、計画に比べると本調査が予定より先行し、文献サーベイと理論レビューがその分、遅れている傾向にある。来年度以降は文献調査を進めつつ、現地の状況に合わせて今後の研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度は、別に参加していた科研費基盤(C)による現地調査、及び所属機関の研究会による現地調査の機会を利用して計4回、本研究のための現地調査を行うことができた。そのため、本研究費からの出張予算支出はなく、その分を調査に必要なタブレットなどの物品購入、及び書籍購入費に充てた。残額は主に、出張旅費が大幅に節約されたためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の残額は多くないため、来年度の書籍購入費、出張旅費と合わせて使用したい。
|
Research Products
(1 results)