2019 Fiscal Year Research-status Report
中国・農民工支援NGOの活動に見る新時代の社会運動
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15K21642
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山口 真美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター ジェンダー・社会開発研究グループ, 研究員 (60450540)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国 / 労働運動 / 農民工 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、本研究の主な研究対象である労働NGOを取り巻く中国国内の政治環境が引き続き非常に悪く、NGO自体が存続の危機にあった。そのため、新たな訪問調査は実施できず、現状の情報収集、既往研究の収集、整理とこれまでの研究を取りまとめる作業を行った。その成果は、所属機関における「新興国の新しい労働運動」研究会における報告、議論と修正を経て2つの調査研究報告書としてまとめ、うち1本は所属機関のホームページ上に掲載されている。次項掲載の「天安門事件と中国の新しい労働運動 ―新旧労働運動史の整理―」である。なお、もう1本の報告書は政治的に敏感なイシューを含むため、ウェブ公開を見合わせた。 年度末にはそれら2本の論文をまとめ、「中国の2つの労働運動――1989年天安門と2000年代――」として執筆した。これは、本研究課題において研究代表者が注目してきた農民工による労働運動を、ブラジル、南アメリカ、フィリピン、インド等の他の新興国でも注目される「新しい労働運動」と位置づけ、その形成過程と社会経済状況の変化に伴う変容と現状の到達点を考察したものである。官製の労働者組織があることで、労働者を組織し、守る本来の労働組合組織が厳しく取り締まられる中国において、底辺労働者である農民工が自ら組織、活動する民間組織である労働NGOは、中国における「新しい労働運動」の最前線で、最も注目される労働運動であり、社会運動であることを明らかにしている。 労働NGOの現場への調査が難しかった他方で、同じく中国から多くの労働者が入国し、最下層の労働現場で就労している日本の技能実習生制度を始めとする外国人労働者の労働現場にも本研究課題の研究関心を延伸した。日本の外国人労働者、移民問題についての資料収集にも着手している。これについては来年度に所属機関の研究会との共同作業を進め、報告書をまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、現地調査の実施は困難になったが、現状に収集できる限りの資料と情報に基づき、論文を作成した。また、それを延伸させて関連する研究にも着手しており、進捗状況はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
提出済みの論文は現在、査読結果待ちであり、今年度の早い時期に加筆修正を経て発表できる予定である。また、日本国内の中国人労働者問題について、今年度は新型コロナウイルス感染症の関係で現地調査は難しいかもしれないが、資料収集と今後の研究へ向けた準備を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
前述したように、本研究の調査対象をめぐる中国国内の政治的環境が緊迫しており、本年度に予定していた現地への調査出張を実施することができなかったため、次年度使用額として繰り越されることとなった。次年度も、新型コロナウイルス感染症の影響で国内、国外ともに出張は難しいかもしれない。資料収集、オンライン取材などの形でリモートでできる範囲で可能な研究活動を展開したい。
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Research Products
(2 results)