2015 Fiscal Year Research-status Report
真菌ワクチンが誘導する肺常在性記憶型T細胞は感染制御に寄与するか?
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15K21644
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
上野 圭吾 国立感染症研究所, その他部局等, 主任研究官 (10550220)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Tissue Resident Memory / Th17 / Cryptococcus gattii / Fungal infection / Vaccine |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性真菌Cryptococcus gattiiによるクリプトコックス症は、近年北米を中心に集団感染が報告され、非免疫不全者の死亡例も報告されている。北米流行型C. gattiiは、感染時に殆ど免疫応答を誘導しないために感染後に得られる情報が少なく、感染制御機構は不明であった。本研究では、本菌に対する感染制御機構を明らかにする目的で、樹状細胞(DC)ワクチンを開発し、その感染制御効果と作用機序を検討した。 DCワクチン投与群では感染後の臓器内菌数や生存率は有意に改善した。DCワクチン投与群の肺では、IFNγ, IL-17A, TNFαの産生が有意に増加し、病理解析の結果、菌体を封入する多核巨細胞の形成も認めた(Ueno et al., Infect Immun, 2015, Ueno et al., Meth in Mol Biol, 2016, in press)。その後の解析で、サイトカイン産生を伴う感染制御効果は、DCワクチン投与2-7ヶ月経過後に感染させた場合も同様に観察され、この感染制御効果の持続性は、感染前の肺で長期間観察される組織常在性CD4+記憶型T細胞 (Lung CD4 TRM)の増加と相関しているように見えた。Lung CD4 TRMは、近年特定された新規サブセットであり、生理学的機能は十分に理解されていない。2015年度は、Lung CD4 TRMの特徴的なマーカープロファイル/サイトカイン産生性を明らかにし、分化制御・長期維持を理解する上で重要な知見を得た。また、末梢循環型T細胞を枯渇させる免疫抑制剤 FTY720の投与では、Lung CD4 TRMは減少しないことが示され、DCワクチンによる感染制御効果もFTY720の投薬では減弱しないことも明らかになった。この結果は、Lung CD4 TRMが感染制御に関与することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) Lung CD4 TRMに発現する特徴的な核内因子・転写調節因子・ケモカイン受容体・サイトカイン受容体・共刺激因子を明らかにし、分化制御・長期維持を理解する上で重要な知見を得た。(2) DCワクチンによる感染制御効果が、免疫抑制剤 FTY720の投与で減弱しなかったことから、Lung CD4 TRMが感染制御効果に関与することが推察された。以上の結果から、Lung CD4 TRMの分化制御機構や感染応答機構が明らかになりつつあり、解析は順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Lung CD4 TRMは再感染に応答してどのような働きをするのか?これを明らかにする目的で、感染後の肺に集積する白血球集団・多核巨細胞形成を評価する。これまでの解析から、DCワクチンの効果が消失するKOマウスも明らかになったことから、そのKOマウスをコントロールとして解析を進める。(2) Lung CD4 TRMの長期維持は、抗原非存在下における恒常性増殖 (homeostatic proliferation)に支えられているのか?それともアポトーシス抑制や別の機序に支えられているのか?これを明らかにする目的で、いくつかのアプローチを組み合わせて解析を進める。特に、恒常性増殖については、ワクチン投与2ヶ月経過した個体にEdUを連日投与しLung CD4 TRMにEdUが取り込まれるかを検証する。
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Causes of Carryover |
下記3点の理由から、次年度使用額が生じた; (1) 謝金の支出が無かったこと、(2) 前年度から持越した試薬や実験器具などで消耗品やその他経費の支出が抑えられたこと、(3) 論文掲載料・英文校閲などの雑費が無かったこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進展に伴い、消耗品や謝金の使用が2015年度分よりも多くなる可能性がある。実験補助に対する謝金の支出や消耗品 (実験動物, 抗体, 汎用試薬, 汎用器具) に充当する。
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[Presentation] 樹状細胞ワクチンを用いた高病原性Cryptcoccus gattiiに対する感染制御機構の解析2015
Author(s)
上野 圭吾, 金城 雄樹, 浦井 誠, 大久保 陽一郎, 清水 公徳, 金子 幸弘, 亀井 克彦, 大野 秀明, 二木 芳人, 澁谷 和俊, 宮﨑 義継
Organizer
第59回 日本医真菌学会総会
Place of Presentation
札幌
Year and Date
2015-10-08 – 2015-10-10
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