2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21649
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
北島 雅之 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (00401000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性炎症 / TSLP / アレルギー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
Thymic Stromal LymphoPoietin (以下TSLP)は、アレルギー性皮膚疾患の発症開始に重要であると多数報告があるが、慢性炎症における役割は十分に解明されていない。そこで皮膚慢性炎症におけるTSLPの役割を明らかにするために、慢性期になるとTSLPを発現し、TSLPに依存的して慢性皮膚炎が増悪するマウスモデルを探索した。その結果、ある皮膚炎症誘導刺激物質を、マウス耳介に繰り返し塗布することによって、皮膚の肥厚の上昇とともに、TSLP発現が上昇することを見いだした。全身的なTSLPレセプター欠損(以下TSLPRKO)マウスでは、野生型マウスと比較して、初回刺激による皮膚の肥厚に違いは観察されなかったが、繰り返し刺激物質を耳介に塗布してくことによって生じる皮膚肥厚の増加は野生型マウスと比較して有意に減少し、さらに耳介におけるTh2サイトカイン発現も減少傾向がみられた。これらの結果は、皮膚炎症を慢性化させると、TSLPが皮膚の肥厚や炎症性サイトカイン産生細胞の誘導に重要な役割をもつことを示唆している。アレルギー性皮膚疾患患者では、TSLP産生細胞としてケラチノサイトが有名である。しかし、ほかの細胞もTSLP産能があることが報告されているものの、慢性皮膚炎症モデルでは、TSLPが産生されているかどうか、明らかにはなっていない。TSLPと同時に蛍光タンパク質GFPを発現するTSLP-GFPレポーターマウスを用いた解析から、皮膚慢性炎症モデルにおいて、TSLP産生を産生する白血球マーカーCD45陽性の免疫細胞を見いだした。しかし、その割合は、CD45陰性細胞よりも低く、ケラチノサイトがより重要なTSLP産生細胞であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究活動では、慢性期にTSLPに依存する皮膚炎を発症させるモデルを見いだした。またTSLP産生細胞を同定するために行ったTSLP-GFPレポーターマウスを用いた解析から、皮膚慢性炎症モデルにおいて、CD45陰性細胞だけでなく、CD45陽性の免疫細胞でもTSLPを発現していることを見いだした。TSLPの標的細胞を検出するために海外研究室より分与して頂いた条件的TSLPレセプター欠損マウスの繁殖が安定し、細胞特異的なTSLPレセプター欠損マウスの使用準備が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に発見したTSLP依存的な皮膚慢性炎症を用いて、特に以下3項目について研究を推進する。(1)前年度では、TSLP-GFPレポーターマウスを使用することによってTSLP産生細胞の同定を行ったが、TSLP産生細胞数は、その後の分離・解析等を進めるために十分ではなかった。正確な成果の獲得を目指すために、効率的な細胞分離法の確立とともにマウスの繁殖を含めた詳細な実験計画を作成・実施する。(2)TSLP誘導因子の同定のために、関連すると考えられる遺伝子発現を確認する。(3)TSLP標的細胞の同定・解析を行うために準備している条件的TSLPレセプター欠損マウスに、皮膚慢性炎症を誘導し、TSLPの下流に存在する細胞の検出・機能解析を行う。
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Research Products
(3 results)