2015 Fiscal Year Research-status Report
食中不飽和脂肪酸バランスによる情動性神経回路制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K21653
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山田 大輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 疾病研究第四部, 科研費研究員 (10621302)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / 恐怖神経回路 / 長期増強 / カンナビノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、その末梢・中枢における健康作用から学術的にも社会的にも大きな注目を集めている。しかし、特にその中枢作用メカニズムについては不明な点が多い。本研究では「食中多価不飽和脂肪酸バランスによる恐怖情動性記憶の修飾」がどのような脳内神経回路レベルのメカニズムによって実現されるのかを明らかにすることを目的に研究を行った。 その結果、オメガ3系PUFA対オメガ6系PUFAの含有比が高い食餌を摂取することにより、カンナビノイドCB1受容体依存的な聴覚性恐怖記憶の低下がおこること、またこれと平行して、光遺伝学的に誘発された恐怖神経回路内の興奮性シナプス伝達の長期増強がCB1受容体依存的に弱まっていることを明らかにした。これらの結果から、PUFAはシナプス可塑性を変化させることで情動性行動に影響を与えるという新規メカニズムの存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は食餌に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)のバランスが情動性行動の1つである恐怖記憶とその脳内神経回路にどのような影響を及ぼすかについて検討する計画であった。以上の点については終了しており、現在論文投稿中である。 当初の計画では、ニューロンの活動依存的に最初期遺伝子Arcと蛍光タンパクVenusを発現するArc-Venusマウスを使用することで恐怖記憶と関連したニューロンを可視化し、恐怖記憶と関連したシナプス伝達のみを選択的に解析する予定であったが、恐怖条件づけによるArc-Venusの発現が安定して得られなかったため、「当初計画通りに進まない場合の対応」に記載のとおり、野生型のマウスを使用して研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
負情動に対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)バランスの影響については概ね当初の研究計画通りに進行しており、計画達成に近い状況である。今後は快情動に対するPUFAバランスの影響および非情動性記憶の1つである空間記憶について検討を行う予定である。 具体的には、報酬欲求行動に対する影響を検討するためにスクロース条件性場所嗜好性試験、また空間記憶に対する影響を検討するためにバーンズ迷路試験を行う予定である。さらに、PUFAバランスが報酬欲求行動に重要と考えられている報酬系神経回路内のシナプス伝達に影響するかについて、恐怖記憶の場合と同様に光遺伝学とスライスパッチクランプを組み合わせて検討を加える。
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Causes of Carryover |
当初計画において予定していた研究補助員の雇用を行わなかったこと、また国外学会への参加を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画遂行のために必要な報酬系(意欲)評価のための行動実験系の構築、および光遺伝学的実験に使用する光源・消耗部品の購入、に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)