2015 Fiscal Year Research-status Report
過去40万年間の長江流出量変動からみた東アジア夏季モンスーン
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15K21656
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 好美 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (80710946)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モンスーン / 有孔虫 / 東シナ海 / 微量元素分析 / IODP / Mg/Ca古水温 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では過去40万年間の東アジア夏季モンスーン変動を明らかにする目的のために,東シナ海北部で採取されたIODPコア U1429試料を用いて有孔虫殻のマグネシウム・カルシウム比(Mg/Ca)およびバリウム・カルシウム比(Ba/Ca)の分析を行なう.平成27年度はコア上部100mを集中して,約15cm間隔でおよそ500層準について分析を終えた.コア上部100mは過去20万年間に相当するため,約400年の時間解像度でのデータを得ることができた.Mg/Caは水温の指標として用いることができ,過去20万年間に,氷期ー間氷期に対応した水温変動があったことを明らかにした.また,共同研究者が分析を行なっている酸素同位体比と組み合わせて,塩分の指標となる海水の酸素同位体比を算出した.その結果,中国東部の鍾乳石の酸素同位体比で見つかっている千年スケールの変動に対応した変動が本研究の海水の酸素同位体比でも確認され,半球的な急激な気候変動に伴って東アジア夏季モンスーンの雨量も変化していたことを裏付けた.一方,もう一つの塩分の指標であるBa/Caについて,コア深度40mまでは,先行研究で報告されている有孔虫殻のBa/Caの範囲内での変動が確認されたが,コア深度40mより深い層準では有孔虫殻のオリジナルなBa/Caよりも10倍ほど高く,二次的なBaの付着が認められた.この二次的なBaの付着は,有孔虫殻の丁寧なクリーニングでも取り除くことが不可能であり,従来の方法では有孔虫殻オリジナルのBa/Caの測定が40m以深で難しいことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の計画はおおむね順調に進んでいる.また,共同研究者の分析の進捗状況も順調である.しかし,Ba/Caについては二次的なBaの付着が認められ,従来の方法では測定が困難であることが明らかとなった.したがって予定していたBa/Caは今後遅れる可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
過去20万年間についてはこれまでおおむね計画通りに研究を進めることができた.今後は過去20~40万年間についての分析を行なうとともに,Baの二次的な付着について原因を特定するとともに,新たな分析手法についても調査,研究を進める.そのためにまずは有孔虫殻のどこにBaが濃集しているかを有孔虫殻の断面の元素分布を調べることで特定し,除去方法について検討を行なう.
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Causes of Carryover |
人件費・謝金が5時間(時給990円)減ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
謝金,5時間に充てる.
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Remarks |
佐川拓也,久保田好美,多田隆治,池原研,入野智久,板木拓也,杉崎彩子,烏田明典,Richard W. Murray, Carlos A. Alvarez-Zarikian, Exp.346 Scientist, アジアモンスーンの発達・変動史の解明, J-DESC News, 2015, Vol.8, P2.
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Proceedings of the Integrated Ocean Drilling Program2015
Author(s)
Tada, R., R.W. Murray, C.A. Alvarez Zarikian, W.T. Anderson Jr., M.-A. Bassetti, B.J. Brace, S.C. Clemens,M.H. da Costa Gurgel, G.R. Dickens, A.G. Dunlea, S.J. Gallagher, L. Giosan, A.C.G. Henderson, A.E. Holbourn, K. Ikehara, T. Irino, T. Itaki, A. Karasuda, C.W. Kinsley, Y. Kubota, G.S. Lee, K.E. Lee, J. Lofi, et al.
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Journal Title
Proceedings of the Integrated Ocean Drilling Program
Volume: 346
Pages: -
DOI
Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Variations in East Asian summer monsoon deduced from 400,000 year records of Mg/Ca sea surface temperature and Ba/Ca of IODP Expedition 346 Sites U1428 and U14292015
Author(s)
Kubota, Y., E. Wakisaka, K. Horikawa, A. Holbourn, S. C. Clemens, K. Kimoto, R. Tada, R. W. Murray, C. A. Alvarez Zarikian, IODP Expedition 346 Scientists
Organizer
INQUA2015
Place of Presentation
名古屋国際会議場(愛知県名古屋市熱田区)
Year and Date
2015-07-27 – 2015-08-01
Int'l Joint Research
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[Presentation] 統合国際深海掘削計画(IODP)346次航海で採取された縁海海底堆積物の高精度年代決定2015
Author(s)
佐川 拓也, 多田 隆治, 池原 研, 入野 智久, 板木 拓也, 杉崎 彩子, 久保田 好美, 烏田 明典, Chuang Xuan, 長橋 良隆, 里口 保文, 中川 毅, Murray Richard W., Alvarez-Zarikian Carlos A., Expedition 346 Scientists
Organizer
日本地球惑星連合大会2015
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)
Year and Date
2015-05-25 – 2015-05-29