2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21659
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
天谷 康孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (10549900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 絶対熱電能 / 精密物性計測 / ゼーベック係数 / トムソン係数 / 排熱利用 / 計量標準 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が提案した熱物性によらず電気測定から絶対熱電能が評価できる新規計測技術(AC-DC法を呼ぶ)の原理実証実験を行い、測定方法を確立することが本研究の狙いである。今年度の研究計画に従い、①トムソン係数評価のためのクライオスタットと測定システムの構築、②酸化物超伝導体を用いた熱電能の評価の2つの課題を設け研究を進めた。それぞれの課題について次の成果を得た。 ①微少なトムソン熱測定に充分応用可能な優れたクライオスタットを試作した。精密なトムソン熱測定を行うため、熱電能の測定にはじめて断熱方式を採用した。そこで、等価熱回路計算により、装置の断熱性能の設計を行った。次に、設計に基づきクライオスタットを製作し、断熱性能、温度安定度、温度勾配特性、熱起電力オフセットなどの特性を評価した。その結果、断熱性能は設計値とよく一致し、1μK/s以下の安定な温度環境、0.1μV以下の小さな熱起電力オフセットを実現した。測定効率を高めるために導入した機械式スイッチが安定に動作することも確認した。 ②酸化物超伝導体YBCOが超伝導転移温度以下では熱電能がゼロとなることを利用し、白金Ptの熱電能の絶対評価を行った。精密な電気抵抗測定から、試作したYBCO基準試料の転移温度は92 K、転移幅1 Kであった。熱電効果が消失する超伝導転移温度以下では、熱起電力が急激な温度変化を示し、電気抵抗測定の超伝導転移温度とよく一致した。92 K以下の温度範囲では、白金の熱電能の測定結果は従来の結果とも良く一致した。以上のように、従来の金属系超伝導体では困難であった、液体窒素温度での白金の絶対熱電能の評価に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に基づき、研究を進め、各課題での目標を達成した。温度標準の精密計測技術を導入することで、クライオスタットの開発が加速し、当初の予想を上回る結果を得た。さらに、今年度中に酸化物超伝導体を用いた測定に成功できたことは、次年度以降の研究をスムーズに進める上で、重要な進捗であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、トムソン熱用のクライオスタットが完成した。残された課題は、トムソン係数の温度依存性を室温以上まで測定し、熱電能を算出することである。これにより、AC-DC法の原理実証が完了し、正確な熱伝導率データ、寸法、熱損失を考慮せず、正確に絶対熱電能を得る新たな測定手法が確立できる。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額が異なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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