2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21663
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤尾 侑輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 研究員 (90635799)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 応力発光 / ひずみセンサ / 微小ひずみ / 内面欠陥の検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2次元的にひずみを可視化できる応力発光センサについて、微小ひずみに対してカメラ等で検出できる感度を有する新規材料の開発を目指した。平成27年度では、溶液中のイオン反応を利用した材料合成方法を用いて、SrAl2O4:EuのSrとAlの組成比(Sr/Al = 0.46~0.485)について検討したところ、化学量論比(Sr /Al = 0.485)よりSr/Al比を少なくすることで0.1%以上のひずみに対する感度が増大することがわかった。一方、0.1%以下の微小ひずみに対する感度は、Sr/Al=0.46とした場合に0.01%の微小ひずみに対する応答性を発現することがわかった。今後は、融剤添加量や焼成温度の系統的な探索による材料結晶性の制御、発光中心元素量の発光強度依存性について検討して微小ひずみに対する感度の向上を目指す。 次に、開発した応力発光材料を用いて内面疲労き裂の検出を試みた。内面疲労き裂を模擬した欠陥は、市販のアルミ合金板(A6061-T6, L:250×W:25×T:1.6 mm)の裏面に型彫放電加工により作製した。アルミ合金板表面に接着した応力発光センサの発光分布は、アルミ合金板に引張荷重を負荷した際の発光をCCDカメラにより撮影して評価した。内面疲労き裂の進展度50~100%の試験片に対する発光分布を評価したところ、発光強度は異なるものの、内面疲労き裂先端に生じる応力集中を発光分布により可視化することに成功した。今後は、より浅いき裂進展度の内面疲労き裂の検出を達成するために、より微小なひずみに対して応答する応力発光材料を開発するとともに最適なセンサ構造を明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2次元的にひずみを可視化できる応力発光センサについて、微小ひずみに対してカメラ等で検出できる感度を有する新規材料を開発することを目指して実施した。材料種としては、種々の欠陥を導入しても結晶構造を保持できるスタッフドトリジマイト型構造のSrAl2O4:Euを用いた。その結果、材料組成比の系統的な探索(Sr/Al = 0.46~0.485)により、本研究開発で目標とした0.01%の微小ひずみに対する応答性を発現させることに成功した。この原因についてはまだ不明瞭な部分が多いため、今後、キャリア励起条件、欠陥状態評価、熱ルミネッセンス測定、X線回折(構造解析)、走査型電子顕微鏡(粒子形態)などの系統的な評価により解明できるように検討を進める。また、平成28年度に計画していた「疑似構造体の表面微小ひずみ分布の可視化」について、本研究開発で開発した応力発光材料を用いた応力発光センサにより実施した。その結果、従来材料では検出することができなかった浅い欠陥(き裂進展度50%)を高感度に検出することに成功した。 これまでの研究開発により、0.01%微小ひずみに対して応答する応力発光材料の開発、及びそれを用いた新規計測技術(外観からは目視できない内面疲労き裂の検出技術)の開発について、これまで報告されていない新規な成果が得られており、当初の計画以上に進展している。また、これらの成果は、国内学会において成果発表しており、社会への成果発信も行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、微小ひずみに対する応答性の発現因子の解明を目指す。具体的には、ャリア励起条件、欠陥状態評価、熱ルミネッセンス測定、X線回折(構造解析)、走査型電子顕微鏡(粒子形態)などの系統的な評価により、微小ひずみに対する応答性に起因する電子状態、結晶構造について詳細に検討する。また必要に応じて、シンクロトロン放射光を用いたEu-L3吸収端のEXAFS測定によるEu2+局所構造解析、発光時間減衰測定により得られるキャリアの移動過程評価を行い、これらの結果を材料合成条件にフィードバックすることで、構造モデルやエネルギーバンドと微小ひずみに対する応答性との関連を総合的に評価する。 また、近年、自動車や航空機の構造材料として注目されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の構造評価に特化した計測技術の開発を進める予定である。CFRPは、強度を高めるために、織物としたCFRPを何層も積層させた構造しており、繊維の配向性や長さ、製造プロセスによって力学特性が大きく変化するため、強度解析の多くは特徴抽出や有限要素法などのモデリング手法に頼っており、推定精度の安定性に課題がある。CFRPの力学特性評価技術として応力発光センサを適用することで、繊維の配向性や長さ、製造プロセスの異なるCFRPのひずみ分布を一つ一つ簡便に計測することができ、力学特性の精度の向上につながることが期待される。また、微小ひずみ応答材料を用いることで、炭素繊維同士をつなぐ役割の樹脂(バインダー)の力学分布を可視化できることが想定されるため、より高性能な計測技術の開発が期待される。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に購入予定であった、物品費(高電圧増幅器)については他事業との共有して使用したため、弊所運営費交付金により支出した。また、研究開発をより効率的に遂行するために、平成28年度に計画していた研究項目「疑似構造体の表面微小ひずみ分布の可視化」の一部を平成27年度に実施し、平成27年度に計画していた研究項目「微小ひずみ応答性に影響する欠陥の解明」を平成28年度に実施する計画に変更した。そのため、今年度使用予定であった助成金を来年度の計画(微小ひずみに対する応答性を発現させる要因の解明)に使用する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に請求する助成金は、物品費:1,205,993円、旅費:500,000円、人件費・謝金:0円、その他:300,000円、間接経費:390,000円、合計:2,395,993円とする。 物品費は、主に、応力発光材料合成用試薬一式、微小ひずみ評価システム構築用消耗品一式、材料合成用器具一式、物性評価のための消耗品一式に使用する。旅費については、2016年10月に予定されている電気化学会の国際会議、国内会議に出席するために使用する。その他については、学会参加費、論文投稿費、外部分析施設使用料に使用する。
|
Research Products
(2 results)