2017 Fiscal Year Research-status Report
長期連続運転可能で極めて高い周波数安定度を有する原子泉の開発
Project/Area Number |
15K21669
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高見澤 昭文 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50462833)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子泉一次周波数標準器 / 外部共振器半導体レーザ / 2次元磁気光学トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
外部共振器半導体レーザについては、すでに原子泉のシステムに実装され、数ヶ月スパンの長期運転の安定性の向上に寄与している。また、2台のレーザ間のビート信号の位相雑音を評価することにより、より正確にレーザの周波数安定性を評価した。その結果、ビート信号のスペクトルから測定した線幅(ランダムな変動による400 kHz、および白色雑音による30 kHz)とほぼ矛盾のない結果が得られた。 2次元磁気光学トラップに関しては、実際にセシウムガスを封入した超高真空内に、互いに垂直な4方向から精密に周波数を制御された円偏光のレーザを照射するとともに、長方形のコイル4つを組み合わせて四重極磁場を生成し、2次元磁気光学トラップを生成した。また、レーザの照射により活性化するタイプのセシウムディスペンサーを利用することにより、真空装置のコンパクト化を行った。ディスペンサーからのセシウムガスの放出が予想より少ないため、現時点では冷却原子ビームのフラックスは目標値より少ないが、セシウムガスの供給量を増やせば目標とする10^9/sのフラックスを実現できるだろう。 原子泉においては、光モラセスの光学系を改善することにより、原子を1マイクロKまで低温度化した。これにより、原子泉に寄与する原子の数が約2倍となり、周波数安定度は7*10^-14/tau^-1/2 (tau: 平均時間(s))にまで向上した。2次元磁気光学トラップを用いずにこうした極めて高い周波数安定度を得たことにより、2次元磁気光学トラップを用いることで目標とする10^-15台の周波数安定度が得られる可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに目標の周波数安定度に対しファクター7にまで迫っているうえ、さらなる周波数安定度の向上のための2次元磁気光学トラップの実験も順調に進んでいる。外部共振器半導体レーザについても、すでに原子泉のシステムに実装されていて長期運転に寄与しており、アライメント依存性の究明によってさらなる長期連続周波数ロックの実現が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
長期運転に関しては極めて安定的に外部共振器半導体レーザの周波数をロックすることが何より重要である。レーザ共振器のアライメントが周波数掃引範囲などに与える影響を調べ、周波数ロックの長期安定化を突き詰めていく。 原子泉の周波数安定度は、原子泉に寄与する原子の数によってリミットされているため、2次元磁気光学トラップによって高フラックス冷却原子ビームを生成し、光モラセスへ高効率に原子をロードすることが必要である。まずは原子泉とは別のチャンバーで構築した2次元磁気光学トラップにおいて冷却原子ビームの高フラックス化を図り、その後原子泉への実装を進めていく。
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Causes of Carryover |
特に2次元磁気光学トラップについて、それほど新規に物品を購入することなく実験系を構築することができたため、使用額が予定よりも少なくなった。次年度は2次元磁気光学トラップを原子泉に実装するため、まとまった資金が必要となる。また、外部共振器半導体レーザについても、アライメント依存性を明らかにしたのちジグ等を再設計して作製し直す際に資金を利用する予定である。
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