2015 Fiscal Year Research-status Report
中層大気上部の重力波活動及びそれに伴う大気大循環の3次元構造の解明
Project/Area Number |
15K21673
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
木下 武也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 統合データシステム研究開発室, 研究員 (20648638)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大気重力波 / 潮汐波 / 大気力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中層大気 (成層圏・中間圏・下部熱圏) における大気大循環は、オゾン等大気微量成分の3次元分布や時間変化に大きく影響を与えるだけでなく、対流圏の気候にも影響を与えることが示唆されている。一方、中間圏から下部熱圏は、対流圏や成層圏に比べ観測領域や分解能が乏しく、未解明な現象が多い領域である。申請者は、アラスカPoker Flat (65N, 147W) MF radar長期観測データから、同地点における中間圏から下部熱圏の短周期重力波の運動エネルギーの半日周期成分が、2000年10-12月おいて半日潮汐波の位相に追随することを発見し、論文化した。今年度は上記観測点に加え、Tromso (70N, 19E) MF radar 長期観測データを解析し、2000年10-12月に見られた、位相追随現象がTromsoでも同期間において存在すること、一方、両地点の重力波運動エネルギーの半日周期成分の位相が180度ずれていることを発見した。その原因を探るため、気象再解析モデルデータを用いて、位相追随期間中の成層圏の高度場を調べた結果、Tromsoは極渦の中に位置していたのに対し、Poker Flatは極渦外に位置していたことがわかった。このことから、位相追随現象で捉えられた重力波は両地点で異なる性質を持つだけでなく、極渦の壁により分離されたままそれぞれの地点に伝播したことが示唆された。さらに、上記現象は複数年度で捉えられており、10年間のコンポジット解析を行った結果、冬季においては位相追随現象で捉えられた半日潮汐と重力波運動エネルギーの位相関係は頻繁に生じやすいことが新たにわかった。申請者はこれらの結果をまとめ論文化し、今年中に投稿・出版予定である。またPoker Flat MF radar観測データは日本で初めてデジタル識別子 (DOI) を付与し、公開している。最後に申請者が研究して用いた計算プログラムは大気圏分野の研究者の多くが利用している解析ツールでも利用できるよう、修正を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、中間圏の重力波活動及びそれに伴う大気循環の3次元構造を明らかにすべく研究を進めている。昨年度の研究では、Poker Flat だけでなくTromos で観測されている中間圏風速データを用いて解析を行い、Poker Flatで発見された重力波運動エネルギーと潮汐の位相追随現象の理解を深めることに成功した。さらに、観測された位相関係は冬季において頻繁に生じていることも明らかにしている。以上の理由より申請者の研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Poker FlatおよびTromso MF radar 観測データから発見した重力波運動エネルギーと半日潮汐の関係は、重力波活動に焦点をあてた解析により得られたものである。今後は、潮汐を含めた背景場に焦点をあて、重力波活動に伴う背景場の変調の詳細を明らかにすることを目指す。そのために上記の長期観測データに加え、物理的に整合性の取れている大気大循環モデルデータを用いて、風速以外の物理量を用いた解析を行う予定である。具体的には、まずモデル内においてPoker FlatおよびTromsoで観測された重力波活動が再現されているか確認する。再現されているならば、風速以外の物理量を用いて、その場における重力波活動を調べ、背景場への影響を詳細に解析する。再現されていない場合は、潮汐場の再現性から確認し、両地点で観測された半日潮汐が全球モードか太陽非同期成分のどちらが卓越しているか調べ、原因を特定することを目指す。また、中間圏は擾乱の振幅が大きいため有限振幅にも適用可能な3次元理論の構築を進める予定である。
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Research Products
(10 results)