2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21674
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
岡本 拓磨 国立研究開発法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所音声コミュニケーション研究室, 研究員 (10551567)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スポット再生 / エリア再生 / 円形アレイ / 空間フーリエ変換 / 窓関数 / 球面調和解析 / 音場変換 / アンビソニックス |
Outline of Annual Research Achievements |
スピーカアレイを用いて多言語音声マルチスポット再生を実現するための,スピーカ配置および信号処理方式,および実環境での実装,評価を以下のように検討した. (1)直線アレイを用いた方式の窓関数の検討と実装:これまでに提案した空間フーリエ変換を用いたスポット再生方式を実環境での実装を実現すべく,64チャネルのスピーカで直線スピーカアレイを実装し,無響室での音響測定を行い,従来法であるエネルギー最大化法よりも提案方法が実測においても高精度であることを確認した.また,これまでの矩形窓だけではなく,コサイン窓でのモデル化を解析的に導出した(信学技報). (2)バッフル型円形アレイを用いたエリア再生:直線アレイはアレイ長が大きくなるという問題に対して,コンパクトなスピーカアレイを用いた検討を行った.具体的には,コンパクトなバッフル型円形アレイの外側にエリア再生を実現する方式である.円筒座標系での空間フーリエ変換を導入し,制御音圧を矩形窓でモデル化することにより,解析的な駆動信号を算出するエリア再生方式を提案した.シミュレーション結果より.従来のビームフォーミングよりも高精度なエリア再生であることを確認した(WASPAA 2015,音講論). (3)上記2つの方式はアレイの外側に音が放射されるため,実環境では反射音の影響により精度が低下することが懸念される.そこで,円形アレイの内側にエリア再生を実現するための定式化を行った.まず,角度スペクトルで記述された音場を解析的に円調和展開へと変換する方式を提案した(ICASSP 2016,音講論).矩形窓でモデル化したアレイ内部の音圧を解析的音場変換により,円形アレイの駆動信号を解析的に導出した.この方式は従来の解析的方式では実現できなかった3つ以上のスポット再生を実現できる(音講論). (4)円形アレイを実装するための設計について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は,(1)反射音のない自由空間における,大きさのない点音源を仮定したスピーカを用いてのシミュレーションでの検討および,(2)実環境における実験のためのシステムの実装であった. (1)直線アレイにおけるコサイン窓の定式化,バッフル型円形アレイを用いたエリア再生の定式化および,角度スペクトルかから円調和展開への解析的音場変換の提案および,解析的音場変換に基づく円形アレイ内部でのエリア再生の定式化を行った.特に,バッフル型円形アレイを用いたエリア再生および円調和展開への解析的音場変換は音響信号処理におけるトップカンファレレンスであるWASPAA 2015(採択率:48%)およびICASSP 2016(採択率:47%)に採択され,学術的にも高い評価を得ている. (2)直線アレイを64チャネルのスピーカアレイで実装し,無響室での測定を行った.また,上記バッフル型円形アレイの設計指針をシミュレーション結果に基づき,検討を行った. 以上により,本研究は計画通り概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進は以下のように行う. (1)多言語音声信号を用いた検討:初年度は,再生する信号は全てインパルスと仮定していたが,多言語音声マルチスポット再生では,入力信号は音声である場合が多い.そこで,当初の計画通り,次年度は音声に特化したスポット再生方式の検討を行う,従来はSNRを規範としてモデル化しているのに対して,マスキング等も考慮したコスト関数を導入することにより実現する. (2)反射音環境に頑健な方式の検討:直線アレイやバッフル型円形アレイを用いた方式では,実環境で使用した場合,壁面などの反射音により精度が劣化する問題がある.そこで,できるだけアレイの外側に音が放射しないような方式の検討を行う必要がある.これまでに提案した直線アレイと円形アレイを併用する方式(ICASSP 2015)や,今年度提案した円形アレイ内部におけるエリア再生等を基盤として検討していく. (3)実環境における実装,評価:直線アレイを用いた方式については,測定,評価,分析が終了し,現在は投稿論文にまとめているところである.今年度のシミュレーション結果および設計指針に基づき,バッフル型円形を実装,音場計測,評価を行う. また,得られた結果は随時投稿論文としてまとめ,発表を行う.
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Causes of Carryover |
今年度は,最適なスピーカアレイ形状およびその信号処理方式を検討する段階であったので,基本的にはシミュレーションでの検討を行った.その結果,今年度の支出は全て学会発表のための旅費および参加費,また,投稿論文論文の英文校閲となった.スピーカアレイについては,今年度はシミュレーションに基づく設計指針を検討していたため,実際の設計は来年度行う.次年度使用額はそのためのものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度のシミュレーション結果をもとに,次年度ではバッフル型円形スピーカアレイを構築し,実験を行う必要がある.次年度使用額はそれらに使用する.
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Research Products
(6 results)