2015 Fiscal Year Research-status Report
ガングリオシド糖脂質クラスター上におけるアミロイドβの構造転換の精密解析
Project/Area Number |
15K21680
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
矢木 真穂 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (40608999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アミロイド / 脂質膜 / 固体NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ガングリオシド含有膜上におけるAβ-Aβ分子間相互作用の同定、α-β転移の構造基盤の解明:脂質膜に結合したAβの固体NMR解析を実施した。その結果、平面性の高いリン脂質膜上において、AβのN末端領域は特定の二次構造をとらないが、C末端領域は安定なβストランドを形成していることが明らかとなった。また、C末端領域のβストランドは分子間で相互作用しており、平行βシート構造を形成していることが示された。この構造は、Aβがαへリックス構造からクロスβシート構造へと至るα-β転移の過程で一過的に生じる中間体構造であると考えられる。
2.家族性アルツハイマー病における変異型Aβの糖脂質認識の特異性の構造基盤の解明:Flemish変異型Aβ(A21G)および野生型Aβについて、NMR解析および速度論的解析を実施した。チオフラビンT蛍光を用いた速度論的解析の結果、A21G変異はアミロイド線維の伸長過程よりも核形成過程に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、NMR解析の結果、GM1ガングリオシドミセルに結合したFlemish型Aβは、C末端側のαへリックスは野生型と同様に保持されているが、N末端側のαへリックスが野生型に比べて非常に緩まっていることが明らかとなった。これらの結果から、1アミノ酸残基の置換によって引き起こされるAβのGM1ガングリオシドクラスター上での構造変化が、アミロイド凝集核の構造形成に影響を与えることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に計画していた1.ガングリオシド含有膜上におけるAβ-Aβ分子間相互作用の同定、α-β転移の構造基盤の解明、および2.家族性アルツハイマー病における変異型Aβの糖脂質認識の特異性の構造基盤の解明に関しては、予定通り達成することができ、それぞれ論文発表に至っている[PLoS ONE, 11, e0146405 (2016)およびBio. Pharm. Bull, 38, 1668-16672 (2015)]。さらに、平成28年度に研究実施予定であった、ガングリオシドクラスターを含む機能的生体膜環境の精密構造解析に関してもすでに着手している。以上、総合的に判断して極めて順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ガングリオシド膜上におけるアミロイド線維形成過程の分子構造論的理解:アルツハイマー病を引き起こす環境依存的なAβの凝集過程の本質を体系的に明らかにするために、Aβの構造変化を規定する膜環境場側の精密構造情報を得ることを試みる。そのために必要な、安定同位体標識や部位特異的に選択ラベルされた糖脂質の調製を行う。さらに、糖脂質の濃度を変化させた膜モデルを調製し、溶液および固体NMR法を用いて糖脂質クラスター側の動的構造情報を抽出する予定である。さらに、Aβ側の高次構造解析、速度論的解析および計算科学的解析などを組み合わせることにより、アミロイド線維形成へと至る構造変化のプロセスを詳細に捉え、糖脂質膜上でのAβのアミロイド線維伸長メカニズムの実体を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
申請時にはクロマトグラフィーシステム一式を設備備品費に計上していたが、採択時には他予算にてすでに購入済みであり、本研究課題の予算により購入する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は消耗品費、旅費、および論文投稿費用として使用する予定である。 固体NMR解析を進めるにあたり、安定同位体標識を施したタンパク質および糖脂質膜調製に必要な試薬が当初の想定以上に大量に必要となることが判明した。したがって、翌年度分として請求した助成金のおおくは、安定同位体標識化合物(13Cグルコース、15NH4Cl、13C/15N標識アミノ酸、重水など)および糖脂質膜調製に必要な試薬(ガングリオシド、コレステロール、DMPCなど各種脂質)の購入費用に充てる予定である。
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[Journal Article] An anticancer drug suppresses the primary nucleation reaction that initiates the production of the toxic Aβ42 aggregates linked with Alzheimer's disease.2016
Author(s)
Habchi J, Arosio P, Perni M, Costa AR, Yagi-Utsumi M, Joshi P, Chia S, Cohen SI, Müller MB, Linse S, Nollen EA, Dobson CM, Knowles TP, Vendruscolo M.
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Journal Title
Sci Adv.
Volume: 12
Pages: e1501244
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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