2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21685
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
白川 智弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 助教 (60582905)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 真性粘菌変形体 / 探索行動 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
真性粘菌 Physarum polycephalum の変形体は単細胞多核の巨大アメーバである.2000年以降,数多くの研究により,変形体は空間的最適化などの計算能力を持つことが明らかにされてきた.加えて近年の研究では変形体はある種の記憶,学習能力を有することが示され,さらには高等生物の認知過程と相同な現象が観察されている.これらの例が示す通り,単細胞生物である変形体はその単純さに比して豊かな情報処理能力を有する.しかしながら,多くの研究は定常的な環境下における変形体の最適化行動に着目したものであり,変形体がどのように変動する(未知の)環境を認知し,生物らしい柔軟な行動を実現しているかに関する研究は数少ない.そこで本研究では変形体の認知的情報処理過程に着目し,実験とモデルの両面からアプローチすることにより,変形体がどのようにして不定な環境に適応しているのかを明らかにすることを試みた. 今年度について,具体的には研究計画のうち以下の内容に取り組んだ.誘引物質は細胞を誘引し,忌避物質は細胞の忌避応答を誘導する.では,刺激強度が近しい誘引物質と忌避物質の混合物は細胞のいかなる応答を誘導するか.変形体を用いた過去の研究では,変形体の行動は完全に誘引されるか完全に忌避するかの二者択一的なものになることが観察されていた.今年度の実験で我々はより広範な実験条件において同実験を実施した.その結果,混合刺激に対する変形体の行動選択は,完全な二者択一ではないものの,先行研究と同様に,強く誘引されるか強く忌避するかのどちらかに分岐するということが観察された.さらに,遺伝子制御ネットワークモデルを構築することにより,シミュレーション上でこの実験結果を再現することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実験は概ね計画通りに進行し,その成果については既にいくつかの学会で発表されている.また,研究計画に示した通り,平成28年度には本研究課題に関連するシンポジウムを主催する予定である.シンポジウムは既に採択されており,前項に示した研究成果を同シンポジウムにおいて発表する予定である.以上の通り,本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り,本研究計画はおおむね順調に進展しており,今後も実験及びシミュレーションを重ねることによって研究計画を推進する。現在既に本研究課題に関連するシンポジウムが1つ採択されているが,可能であれば国内でもう1件のセッションを企画し,本研究課題の成果を広く公表する予定である.
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国内学会に関して,都合により不参加となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内学会参加1回分の旅費として使用する.
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