2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21704
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
中嶋 智史 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, その他部局等, リサーチ・アソシエイト (80745208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 顔記憶 / 環境 / 温度 / 表情 / 潜在的連合 / 印象評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、環境温度が顔記憶および表情の処理に及ぼす影響について検討した。実験1では、表情によって人物の「温かさ」についての印象が異なるかを検討したところ、同一人物であっても,中性や不快の表情に比べて,喜びの表情では「温かい」人物であると評価されることが示された。実験2では、潜在連合テストを用いて、表情と温かさの概念間の関連性について検討したところ、喜び表情は「温かい」と、悲しみ表情は「冷たい」との連合が強いことが示された。実験3では、実際の環境温度の変化によって表情の処理が変化するかを検討した。参加者を高温群と低温群にランダムに振り分け、モーフィング手法によって作成された喜び―恐怖もしくは喜び―悲しみの曖昧表情に対する判断がどのように変化するかを測定した。実験の結果、喜び―悲しみ表情については、環境温度による明確な差異は見られなかった。一方、喜び―恐怖表情については、高温群では、曖昧な表情に対してより「喜びである」と判断する比率が高くなっていたが、低温群では、操作段階で曖昧な表情に対して「恐怖表情である」と判断する比率が高くなっていた。実験4では、環境温度の変化によって顔記憶における表情の効果が異なるかを検討した。実験の結果、高温条件では、統制段階と操作段階で明確な変化は見られなかった。一方、低温条件では、統制段階に比べて操作段階で喜び表情の記憶成績が低下する傾向が見られた。総合すると、①温度に関する概念と表情に関する概念には顕在的にも、潜在的にも関連性が見られること、②環境温度の変化によって曖昧な表情に対する判断が変化すること、③環境温度の変化によって顔の記憶のされやすさが変化すること、の3点が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度と表情処理の関連について、客観的なデータが存在しなかったため、ベースとなるデータを取得するために時間が必要であったこと、また、顔記憶実験には多数の実験協力者が必要であるが、所属していた機関において複数回の実験を行うに足る充分な実験協力者を集めることが困難であったことから、当初予定していた季節変化に伴う顔記憶の変化について実験を実施することが困難であった。一方で、温度と表情処理の関連性の強さについて多様な観点から支持する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、温度と表情処理の関連性を示す様々なデータが得られたが、環境温度の操作についての実験は再現性があるかを確認する必要がある。そのため、来年度は、環境温度の変化が表情処理および顔記憶に及ぼす効果について引き続き同様の手続きを用いて再検討する。また、加えて、実際の物理環境ではなく、主観的な「温かさ―冷たさ」などの感覚を操作することで、環境温度の変化と同様に顔・表情の処理が変化するかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
実験協力者の募集を人材派遣会社に委託したが、当初予定していた人数を人材派遣会社が集めることができなかったことから、人件費の余剰が発生したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の実験協力者への人件費に充てる予定である。
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