2015 Fiscal Year Research-status Report
イチジクコバチにおける寄主植物への適応の遺伝的基盤の解明
Project/Area Number |
15K21705
|
Research Institution | JT Biohistory Research Hall |
Principal Investigator |
和智 仲是 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (40635299)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 昆虫 / イチジクコバチ科 / イチジク属 / 生物間相互作用 / 共種分化 / 遺伝的多様性 / ゲノム / 分子生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イチジクコバチの種群を材料に、次世代シークエンサーを用いた解析により点突然変異をマーカーにしたゲノム規模の相関解析を行う。そして寄主植物の異なる種間・集団間の比較により、種ごとに特定の寄主植物の利用を可能にするゲノム領域を明らかにする。新たに解読するイヌビワコバチのゲノムや他種のゲノムを参照配列として、寄主であるイチジク属植物への適応に関わる遺伝子群の探索を行う。一連の解析結果により、イチジクコバチにおける寄主利用の遺伝的基盤を明らかにすることを目指す。 本年度は日本・台湾で採集したイチジクコバチ(イヌビワコバチ Blastophaga nipponicaとその近縁種3種)を用いて、種ごとに特定の寄主植物の利用を可能にするゲノム領域の解明に取り組んだ。合計130個体の次世代シークエンサーを用いたddRAD-seq解析により得られている99,424遺伝子座の種間・集団間の遺伝的分化の程度を調べた。その結果、ミトコンドリアDNAや核DNA(マイクロサテライトマーカー)と同様に、台湾に分布するイヌビワコバチを含む3種のほとんどの遺伝子座では寄主植物の違いに対応した遺伝的分化が見られないことが明らかになった。台湾の3種は、比較的最近の絶滅と寄主転換により、現在の「1種コバチ:多種イチジク」の関係になった可能性が示唆された。さらにこれら3種間で遺伝的分化の大きな(種特異的な対立遺伝子を持つ)遺伝子座の探索を行った。これらの遺伝子座は、寄主植物への適応に関わるゲノム領域のマーカーとして利用できる可能性がある。予備的ではあるが、種間で特に遺伝的分化の大きな遺伝子座(FST=1)として合計46領域が見出された。見出されたマーカーの周辺の塩基配列の決定・ゲノム上での位置の特定のためにイヌビワコバチのゲノム配列の解読に着手し、配列情報の取得を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに解析に必要な種群を選定することができ、参照配列に用いるイヌビワコバチのゲノムの解読に必要な配列情報の取得を行い、解析に必要な基盤が整ったため。一方で、種間で遺伝的分化の大きな領域をマーカーとして見出すための解析は予備的なものしかできていないため次年度以降に検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
寄主植物の違いと相関のあるゲノム領域を検出するため、集団史を考慮したシミュレーションにより得られた塩基配列情報と比較する等、種間の遺伝的分化についての解析方法の改良を検討する。マーカー周辺の塩基配列の決定と候補領域のゲノム上での位置の特定のためにイヌビワコバチを用いてドラフトゲノム配列を構築する。
|
Causes of Carryover |
複数の業者から見積もりを取る等、消耗品の調達方法の工夫により当初計画と比べ経費の節約が出来たため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)