2017 Fiscal Year Research-status Report
偏微分方程式の逆問題のインバージョンに関する数学的厳密性と実用可能性の研究
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15K21766
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 玄 北海道大学, 名誉教授
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | interior transmission problem / グリーン関数 / 適切性 / 非等方弾性方程式 / 係数決定逆問題 / 横等方弾性方程式 / 斜方晶系型弾性方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の交付申請書の研究目的と実施計画として立案した次の3つの項目に対して集中的に研究することを計画した。即ち、1)滑らかな係数を持つ等方弾性方程式の境界値逆問題の一意性は大きな未解決問題である。その解決の為の大きな一歩として、この境界値逆問題に対するgeneric uniquenessを示す。2)反射地震学の逆問題である区分的に解析的な係数を持つ非等方弾性方程式に対する係数同定逆問題のglobal uniquenessを、static case, stationary case, dynamical caseの3つの場合に対して示す。3)能動的サーモグラフィを用いた未知空洞の理論的再構成スキームの一つであるlinear sampling methodを適用する際に現れるinterior transmission problem(以下ITPと略)の適切性を示す。これらの研究計画をもとに研究を開始したが、2), 3)に関する研究が先行し、特に2)の研究は非常に大きく発展して行った為その研究を集中的に行った。そのため1)の研究は平成30年度に先送りした。2), 3)の研究実績は次の通りである。 2)については、ITPのGreen関数を構成し、それを用いてITPの適切性を示した。これらの結果は、極めて斬新で重要な結果である。今後これらの結果とその中で使われた方法は、様々な問題に応用が見込まれる。 3)については、static case, stationary case, dynamical caseの何れに対してもglobal uniquenessを示すことが出来た。特に区分的に斉次な場合はほぼ完璧な結果が得られ、区分的に解析的な場合は横等方弾性方程式と斜方晶系型非斉次弾性方程式のそれぞれの係数同定問題についてglobal uniquenessを示した。但し、前者に対しては対称軸、後者に対しては対称面を既知とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度交付申請書記載の3つの研究計画1)~3)(項目9の研究実績の概要参照)の中の研究計画1)は実行できなかったが、他の2つの研究計画については、当該研究課題について計画していた以上に研究が進展し、非常にレベルの高い研究成果が得られた。研究計画1)についても研究手法は十分煮詰まっている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず29年度の研究計画の中で実行出来なかった研究課題 : 滑らかな係数を持つ等方弾性方程式の境界値逆問題の一意性問題についていわゆるgeneric uniquenessの証明に取り組む。また光トモグラフィーに対する実用的な再構成手法の理論研究とその有効性を数値実験により検証を行う。そして光トモグラフィーの実験研究者と協力して、この再構成手法を技術レベルにまで仕上げていきたい。
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Causes of Carryover |
研究分担者の分担金の執行管理が少し甘かったことと、海外研究者の招聘がキャンセルになったため、次年度使用額が生じた。この使用計画としては、研究代表者が現在使用中の老朽化したパソコンの更新費、資料整理のためのスキャナー購入費、海外研究者の招聘費用として使用することを計画している。
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Research Products
(14 results)