2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノスケール変態強化を発現する新奇高靭性セラミックスの開発
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15K21768
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西山 宣正 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (10452682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 史博 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30293062)
増野 敦信 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (00378879)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 高温高圧合成 / ナノセラミックス / 高靭性 / 変態強化 / 透明セラミックス / 窒化ケイ素 / 耐熱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、スピネル型窒化ケイ素透明多結晶体の合成とその機械的性質の評価を行った。これは全物質中で3番目に硬い物質であり、この物質が透明になるメカニズムを原子分解能透過型電子顕微鏡観察により明らかにした。最も硬い透明セラミックスであるダイヤモンドの空気中での耐熱性は約700℃までと比較的低い。これは高温空気中でダイヤモンドが酸化し二酸化炭素になり、さらにダイヤモンドが石墨に変態してしまうからである。一方、スピネル型窒化ケイ素は、硬さはダイヤモンドに劣るが、空気中での耐熱性はそれを大きく凌ぐ1400℃以上であることが知られている。したがって、スピネル型窒化ケイ素透多結晶体は、ダイヤモンドウィンドウでは耐えることができない過酷な環境で使える耐熱硬質ウィンドウとして使用できる可能性を持つ物質である。この成果は東工大およびドイツ電子シンクロトロンにおいてプレスリリースし、日本およびヨーロッパで広く報道された。 さらに、MgSiO3アキモトアイト・ペロブスカイト多結晶体の合成とその機械的性質の評価、シンクロトロン放射光を用いた評価、マイクロカンチレバー試験、第一原理計算を用いた亀裂先端に相当する引張応力下での原子の振る舞いの評価を行った。このうちMgSiO3ペロブスカイトが破壊誘起アモルファス化に起因する変態強化を示し、とても割れにくいセラミックスであることを示すデータが得られつつある。平成29年度に、この研究をさらに進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高靭化する可能性がある硬質セラミックスとして以下の物質を研究対象とした : ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、スピネル型窒化ケイ素、MgSiO3アキモトアイト、MgSiO3ブリッジマナイト。これらの物質のうち、スピネル型窒化ケイ素透明多結晶体の合成とその物性測定の結果を論文として報告した。これを日本とドイツでプレスリリースし、日本を含む世界で広く報道された。さらに、MgSiO3ブリッジマナイトが高靭化し、MgSiO3アキモトアイトがそうならないことを示した。前者が割れにくくなるメカニズムをシンクロトロン放射光、マイクロカンチレバー試験を用いて評価した。さらに国際共同研究を進め、このメカニズムの物理的背景を第一原理計算によって追求している。この研究結果を、平成29年度の前半に論文投稿すべく現在も研究を進めている。上記、5つの物質のうち3つに関して大きく研究が進展した。残る物質であるダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素に関しても合成条件の確立のための研究を進めつつある。研究開始は、平成28年12月であるが本基金を利用させていただくことにより、短い期間で多くの成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ナノ多結晶ダイヤモンドおよびナノ多結晶立方晶窒化ホウ素の合成に重点的に取り組み、それらの物質が高靭化しているメカニズムの解明のために、以下の評価に取組む。放射光を利用したX線吸収分光測定およびX線回折測定、透過型電子顕微鏡による観察、マイクロカンチレバーを用いたミクロサイズ材料試験はこれまで通り行う。さらにこれらに加えて、SPring-8、ナノフォーカスビームを利用した100nm程度の空間分解能を有するX線回折実験を行う予定である。これにより、破断面に形成された“破壊誘起アモルファス層”の構造情報を得ることを目指す。さらに、これまで以上に国際共同研究を推進する。第一原理計算に関しては、南カリフォルニア大学との共同研究をこれまで通り推進する。さらに、スピネル型窒化物に関して、パリ13大との共同研究を開始する。
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Causes of Carryover |
東工大への着任が平成28年12月1日であり、本研究の開始はそれから約1ヶ月後である。初年度に、研究に必要な備品を購入するために多くの予算を計上した。しかしながら、幾つかの備品は入札のために納品まで長い期間が必要であることが判明し、またあるものは製作に時間がかかり平成28年度内に納品されなかった。これらの設備品のうち幾つかは平成29年度のはじめに納品され、またいくつかは近く納品予定である。納品時に予算執行となるため、平成28年度に予算消化することができず、平成29年度使用額が生じた。この次年度使用額は使途がほぼ確定し、平成29年度前半に執行が予定されている。執行される金額は申請した研究計画にしたがっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分からの次年度使用額に関しては、高額な備品の入札を完了し現在納品待ちである。よって、この次年度使用額に関してはすでに使途が確定している。平成29年度に請求した助成金は、申請書の使用計画に沿って執行させていただく予定である。平成29年度は主にナノ多結晶ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素合成に必要な消耗品を購入し、物質合成および評価を重点的に行う。これらの合成を円滑に進めるため、技術補佐員、事務補佐員の雇用をすでに開始した。さらに、これまでに得られた成果を国際学会などで発表する。さらに国際共同研究をさらに活発化させるため、アメリカ、ドイツ、フランス、スロバキアなどの共同研究者との議論を行う。
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Research Products
(12 results)