2018 Fiscal Year Research-status Report
人間の外界空間認識過程に基づく自己運動感応型バーチャル視聴覚空間創成技術の確立(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | バーチャルリアリティ / マルチモーダルインタフェース / 認知科学 / 情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,人間の自己運動時の視聴覚による外界空間認識メカニズムの解明と,その知見に基づいた視聴者の自己空間を精密に再現可能な自己運動感応型VR空間創成技術の構築を目指す。 平成29年度に実施した海外との国際共同研究により,これまで開発してきた聴覚VR空間創成技術の精度向上が本プロジェクトの目的を達成する鍵であることが明らかとなった。そこで,当初平成30年度に予定していた海外渡航を令和元年に実施することとし,平成30年度はその準備として,球状マイクロホンアレイを用いた我々の提案する音空間収音・再生技術の高度化,特に知覚的高精度化を目的に研究を実施した。これまで我々が構築していた音空間収音・再生技術は,球状マイクロホンアレイ上に配置されたマイクロホンの配置密度によって再生上限周波数が決まる。しかし,可聴周波数全体で高い精度を実現するためには,極めて稠密にマイクロホンを配置する必要がある。そこで,再生上限周波数以上の周波数での再現音空間の精度に着目した。人間は両耳に入力された信号の差を音空間知覚手掛かりとして利用しているが,高い周波数では低い周波数に比べ位相情報の手掛かりに対する重みが低い。そこで,振幅特性に着目して音空間を合成することにより,知覚的音空間の精度向上を検討した。球面調和関数を用いた音空間収音・再生技術において提案されている,各スピーカから出力される駆動信号の位相を制御して制御点を両耳付近に移動させる方法を構築技術に適用したところ,特に頭部の影側に該当する音空間の精度が向上することが明らかとなった。この際に重要となるのはターゲットとなる音空間の位相情報を適切に操作することで,音空間知覚手掛かりとなる振幅特性の精度向上が図れることである。 令和元年は,この技術を基盤として,海外渡航を通して国際共同研究を継続して実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外渡航を平成30年度から令和元年度に変更したものの,令和元年度に主に実施する予定の聴覚VR空間創成技術に関する国際共同研究の準備がある程度目処がついた。さらに,その過程で得られた成果について令和元年に実施される国際学会(internoise2019)で招待講演を行うこととなった。加えて,本研究プロジェクトを基盤として,新たな国際共同研究の実施の可能性も見え,実際に平成30年度,令和元年度の両年度にわたり,該当する共同研究者が本研究機関を訪問することとなっている。 以上を鑑みると,本研究プロジェクトは概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,本研究プロジェクトの最終年度である。聴覚を基盤とした人間の外界空間知覚特性の解明と,その知見を生かしたVR空間創成技術の確立を目指し,平成30年度に考案した音空間収音・再生技術の知覚的高精度化をシステムに組み込む。さらに特にユーザが運動している際の外界空間知覚メカニズムについて,視覚,聴覚,前庭感覚情報が存在する環境下で知覚される外界情報の変化について,知覚心理実験を用いて明らかにする。最終的にはこれらの成果を統合し,技術の高度化をさらに進めていく。
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