2016 Fiscal Year Research-status Report
能動的センシングシステムとしての探索的身体運動の組織化過程の解明(国際共同研究強化)
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15KK0009
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野中 哲士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20520133)
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Project Period (FY) |
2015 – 2017
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Keywords | アフォーダンス / 道具使用 / 探索行動 / 発達 / 対人間協調 / 身体知 / 発達 / 習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日常生活技能の獲得場面において周囲を知覚探索する探索的行動を自然に促す状況づくりについて検討することを目的とするものである。当該年度中、筆者は平成28年4月1日から平成29年3月16日まで米国ハーヴァード大学ヴィース研究所に訪問研究院として研究滞在し、同研究所のGoldfield博士と共同研究を行った。日常生活技能のなかでも、特に子どもの自律的な摂食行動の獲得場面、および自律歩行獲得場面において、母親が子どもの周囲の状況をどのように調整しているのかを検討した。この研究の成果の一部は、平成28年6月にClemson大学の主催で行われたInternational Society for Ecological Psychology for America、および同年7月に行われたInternational Congress of Psychologyにおける道具使用をめぐる大会招待シンポジウム“The cognitive and neural bases of human tool use”における口頭発表にて報告された。また、日常の乳児の食事場面における母親による状況づくりに関する研究論文をGoldfield博士と共同で執筆し、英文ジャーナルに投稿した。同論文では、乳児が道具を目的に向けて使用する以前に探索的な道具使用が長期間見られること、さらにこうした非合目的的な探索的な道具使用を許容し、促すような環境の配置を母親が乳児の周囲に生成している事実を詳細に報告した。歩行の研究では、歩き始めて間もない乳児の歩行を母親が手で支えて介助するとき、前方の推進力を生む前後方向への乳児の探索的な重心の揺動は許容する一方で、左右方向の重心の動揺を抑えることに向けた乳児の自発的な運動協調が創発するタイミングで支える手を離し、独歩を促すという予備的結果が母子の3次元動作解析から得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日常生活技能の獲得に困難を抱えている子どもの自発的な探索行動を自然に促す支援に関する国際共同研究を進め、国際学会、論文等で共著論文を報告するという目的はおおむね達成できた。本期間内においては、予想を超える研究の進展を見るまでにはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年7月に韓国のソウルにて行われるThe 19th International Conference on Perception and Actionにて、日常の乳児の食事場面における母親による状況づくりに関する研究発表をGoldfield博士と共著で行う。共同研究で実証的に示した事実をもとに、母親が乳児を支える行動と乳児の身体運動協調との関係について展望する論文を英文ジャーナルに投稿する。さらに、国際共同研究から得られた知見をヒントとして,障害にあわせて状況を変化させ,利用者が自発的にまわりを探る探索行動の組織の生成を支援するリハビリ介入や福祉機器の可能性についても検討を進める。
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Research Products
(27 results)