2016 Fiscal Year Research-status Report
メチル水銀による酸化ストレス誘導メカニズムの解明とそのin vivo神経影響評価(国際共同研究強化)
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15KK0024
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石原 康宏 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (80435073)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | ミクログリア / AhR / 脳内炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aryl Hydrocarbon Receptor(AhR)はダイオキシンをはじめとした芳香族化合物の受容体であるが、炎症性分子の転写因子であるNF-kBと相互作用し、炎症状態を制御することが示唆されている。本研究では、AhRの脳内炎症や、炎症が誘発する神経障害における役割を、脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに焦点を当てて検討する。 マウス脳内のAhR発現を免疫蛍光染色で検討したところ、海馬における発現が極めて低い一方、大脳皮質(側頭葉、前頭葉)において強い発現が認められた。また、AhRの機能を抑制するタンパク質として知られているAryl Hydrocarbon Receptor Repressor(AhRR)の発現も調べたところ、大脳皮質で強く発現し、海馬の発現は弱かった。これらの結果より、大脳皮質のAhRの役割に着目することとした。リポポリサッカリド(LPS)を側脳室に投与すると、炎症性サイトカインであるTumor necrosis factor αとInterleukin-1βの発現が大脳皮質において大きく上昇した。このとき、AhRの発現は、LPS投与初期に大きく増加し、後期には基底状態以下に減少した。また、初代ミクログリアを、LPSをはじめとした炎症性誘発性刺激により刺激すると、AhRの発現は大きく上昇した。以上より、脳内の炎症状態とAhRの発現が相関することが明らかとなった。 平成29年3月に渡米し、実験系のセットアップを進めている。平成28年度に得た基礎的な成果を基に、AhR欠損細胞やAhR KOマウスといったAhRを遺伝的に欠失させた実験材料を用いて研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス脳内におけるAryl Hydrocarbon Receptor(AhR)の発現を確認できた。また、炎症誘発性物質であるリポポリサッカリド(LPS)が、in vivo(マウス)、in vitro(初代ミクログリア)ともにAhRの発現を誘導することを明らかにした。以上の結果より、AhRが脳内炎症の進行や終息において何らかの役割を果たすことが示唆された。また、平成28年度3月に渡米し、カリフォルニア大学デービス校にて研究遂行の準備を進めている。 以上より、平成28年度の進捗状況を『おおむね順調に進展している』とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はカリフォルニア大学デービス校にて研究を遂行する。Aryl Hydrocarbon Receptor(AhR)ノックアウトマウスを用い、AhRの脳内炎症、および、酸化ストレス制御における役割を直接示す。また、渡航先の研究室では、AhRを欠損させたMouse Embryonic Fibroblasts(MEF)を所有していることから、細胞レベルでのメカニズム解析は、MEFを用いて進める計画である。
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Research Products
(3 results)