2017 Fiscal Year Research-status Report
キャリア粒子を用いた種・部位特異的な薬物伝達技術の開発と農業分野への応用(国際共同研究強化)
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15KK0025
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野村 俊之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285305)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 環境材料 / 薬物送達システム / コロイドソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
植物病害による食料被害は、世界の農業生産の10~20%を占めており、8億人の食料に相当すると言われている。基課題では、キャリアナノ粒子を用いて薬物を種・部位特異的に細胞内に直接送達することで、植物病害の駆除や予防、回復を試みる検討を行っている。しかし、生物に由来した植物病源は、細菌、菌類、放線菌などの微生物、植物ウイルス、線虫やダニなどの小動物と多岐にわたり、種によって薬剤が異なるだけでなく局在も異なっているため、生物由来の植物病害を阻止するためには多様な技術が必要とされている。本研究では、英国ケンブリッジ大学A. F. Routh博士と共同で、性質の異なる薬剤を同時に内包できる生分解性コロイドソームの合成法の開発とその実証試験を行うことを目的とする。 平成29年度の研究では、生分解性ポリマー(乳酸グリコール酸共重合体PLGA)中空粒子の合成メカニズムとその内水相への種々の親水性物質や微生物の封入について主に検討した。PLGAを溶解させた植物油に、溶解限界未満の水を添加してからガラス転移温度Tgで加熱後、水道水で冷却すると、均一核生成により水の液滴が析出してから油水界面にPLGAが析出することで中空粒子が合成されることが分かった。一方、溶解限界以上の水を添加すると、油相中にPLGAナノ粒子が生成した後、油水界面に自己集合してコロイドソームを形成することが分かった。次に、モデル親水性物質としてローダミン、デキストラン、ウシ血清アルブミンBSA、モデル微生物として乳酸菌と大腸菌、モデル薬物としてオキサミル(線虫防除剤)を、それぞれ植物油に添加する水に溶解もしくは分散させてから中空粒子を合成した結果、いずれの物質も封入することができた。ただし、BSAと微生物の封入率は低く、疎水度の違いが封入率に影響することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生分解性かつ生体適合性のPLGA中空キャリア粒子の合成メカニズムを明らかにし、薬物の封入にも成功した。以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)種々の農薬を封入したキャリア粒子の合成とモデル土壌を用いた実証試験を行う。 2)薬物封入率の向上について検討する。
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Research Products
(6 results)