2016 Fiscal Year Research-status Report
インド密教における観想法と曼荼羅儀礼の包括的研究(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0033
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊谷 竜太 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (50526671)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | ジュニャーナパーダ / 秘密集会 / ディーパンカラバドラ / ラトナーカラシャーンティ / ヴィタパーダ / 『四百五十頌』 / 『普賢成就法』 / 『ヴァジュラーヴァリー』 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンスクリット写本の研究は、情報技術の発展に伴って近年急速に進展し、世界各国で厖大な写本のデータベース化が進められている。カタログや画像データの一部は、すでにインターネット上に公開されている。このような状況において、本研究課題はインド密教の曼荼羅理論が医術・建築・法典文献における受胎あるいは死・再生の理論形成に重要な役割を担ってきたことを指摘する申請者の採択課題研究を、海外における写本・語彙集成プロジェクト(NGMCP・ITLR)と直接的に連結させることによって課題の加速的進展と人文学における国際的な研究環境を構築するものである。 初年度となる2016年度において、ドイツ・ハンブルグ大学に渡航する以前に共同研究者のHarunaga Isaacson教授と基本的な研究計画について話し合った。その際に、Szanto博士が校訂中の『普賢成就法』注『サーラマンジャリー』についても貴重な情報を得た。同テキストは共同研究のテーマであるディーパンカラバドラの曼荼羅儀軌『ローカアーローカカーリカー』と『普賢成就法』は密接な関係にあり、Szanto博士が校訂作業を進めている。得られたこれらの知見については、現在原稿を用意し出版準備を進めている。『ローカアーローカカーリカー』にはラトナーカラシャーンティ、ヴィタパーダによる二つの注釈書がチベット訳のかたちでのこされているが、両書にはそれぞれ解釈の違いに基づく異読が散見され、アバヤーカラグプタの『ヴァジュラーヴァリー』とあわせて曼荼羅儀軌の成立と変遷を知る上で貴重な情報を得られることが期待できる。現在『ローカアーローカカーリカー』導入部については原稿のかたちに纏めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航前に国内において収集しうる限りのサンスクリット・チベット資料を収集しえた。また、以前から準備を進めていた『ローカアーローカカーリカー』サンスクリット・チベット語訳校訂テキスト・日本語訳原稿に基づき、Harunaga Isaacson教授のアドヴァイスの下、現在新たな新出資料を組み込む形で『ローカアーローカカーリカー』のサンスクリット原典・チベット訳テキストの再校訂と英訳の作成を進めている。なお、導入部の原稿はほぼ作成している。『ローカアーローカカーリカー』の流伝を明らかにすることは、アバヤーカラグプタの『ヴァジュラーヴァリー』『アームナーヤマンジャリー』の成立状況を明らかにすることに直結する。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には、渡航前に準備していた『ローカアーローカカーリカー』サンスクリット・チベット語訳校訂テキスト・日本語訳の原稿に基づき、新たな新出資料を組み込むかたちで『ローカアーローカーリカー』サンスクリット原典・チベット訳テキストの再校訂を行い、英語による訳注の作成を進めていく予定である。Harunaga Isaacson教授と随時に連携し、新たに確認されたサンスクリット写本を使用する予定ではあるが、従来から用いてきたゲッティンゲン図書館所蔵写本についても、同書を研究するDaisy Cheug氏と共に現地に赴き、実見して調査する予定である。Cheug氏は現在『ローカアーローカーリカー』「灌頂儀軌」部分の校訂・訳注作業を進めており、Isaacson教授と同氏と随時に連携して研究に当たる。さらにチベット訳についても新たな資料に基づき、従来知られなかったいくつかの異読を採集し、原稿に反映させる予定である。
|