2018 Fiscal Year Research-status Report
インド密教における観想法と曼荼羅儀礼の包括的研究(国際共同研究強化)
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15KK0033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊谷 竜太 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (50526671)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | インド密教 / 曼荼羅儀軌 / ジュニャーナパーダ / ディーパンカラバドラ / ヴィタパーダ / ラトナーカラシャーンティ / アバヤーカラグプタ / 『四百五十頌』 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年に引き続き、ディーパンカラバドラの曼荼羅儀軌『四百五十頌』の校訂・訳注作業を進めている。ラトナーカラシャーンティ・ヴィタパーダによる『四百五十頌』両注に加えて、アバヤーカラグプタの『ヴァジュラーヴァリー』、さらには最近になってバイリンガル写本が発見された『アームナーヤマンジャリー』両書を活用することでラトナーカラ・ヴィタパーダの失われた梵文を想定し、一部の復元に役立てることができた。 作業を進めていくうちに、ラトナーカラ・ヴィタパーダがそれぞれ掲げる「tika」と「vyakhya」という両注が「複注」の意味をもっていることに気づいた。すなわち、『四百五十頌』のもとになった失われたジュニャーナパーダの『二百五十頌』の注釈として450のシュローカからなる『四百五十頌』があり、それに対してラトナーカラ・ヴィタパーダの両注が作られたと推測される。このことは、ヴィタパーダ注の終末偈の記述、ラトナーカラ注の冒頭部分からも裏付けられるが、ジュニャーナパーダの『ヘールカ成就法』の並行箇所がより注目されるべきである。 以上のクロノロジーにもとづき現在作業を進めているが、これらの成果の一部については、印度学仏教学会をはじめ各学会で発表し、その一部を出版した。 最終年度となる2019年度はこれまでの成果を取りまとめ、全体を出版できる状態にすることを目標にしている。当初の予定どおり『四百五十頌』「前段階の奉仕儀軌」を中心にすることを考えているが、『アームナーヤマンジャリー』から新たに得られるジュニャーナパーダ流の曼荼羅に関する理論的部分を可能な限り取り上げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次年度に当たる2017年より二年間の渡航を予定しハンブルク大学に赴いたが、2017年の10月より東北大学から京都大学白眉センターに異動になり、異動の手続きないしこれにともなう業務によって研究計画の大幅な見直しを迫られた。 こうした状況に加えて、2017年の半ばに本課題を密接な関わりをもつ『アームナーヤマンジャリー』の梵蔵バイリンガル写本が発見されたこと、さらには、本研究課題の基本文献である『四百五十頌』の新たなる梵文写本の発見に加えて、従来のヴィタパーダ・ラトナーカラシャーンティとは異なる未知の『四百五十頌注』梵文写本が発見されたことも本研究計画の変更に至った理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
異動にともなう渡航計画の変更については、1年間の期間延長によって研究を推進できる時間を確保することができた。 上記の新出文献のうち、未知の『四百五十頌注』についてはすでに全体の翻刻と訳注作業を終えているので、最低限こうした新しい情報を盛り込む準備は整えられている。残された1年間で可能な限り『アームナーヤマンジャリー』をはじめとする新しい資料をも随時に活用する予定であるが、当初の予定の校訂・訳注作業に支障がないように作業を進めていく。
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