2015 Fiscal Year Research-status Report
分析考古学による西アジア先史時代石器利用の研究(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0035
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)
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Project Period (FY) |
2015 – 2016
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Keywords | 考古学 / 人類学 / 石器 / 西アジア / 先史時代 / 基礎研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究期間は、平成28年2月末に交付申請を提出後の1ヶ月間のみになる。その間、イギリスへの渡航準備を開始し、平成28年4月16日から平成29年1月30日までの予定でマンチェスター大学に滞在して共同研究をおこなうことを決定した。受け入れ機関からの許可、ビザの取得を含めた渡航準備を経て、予定通りこの期間にイギリスへ渡航する準備を完了した。共同研究者のスチュアート・キャンベル教授と連絡を取り、渡英後すぐに黒曜石資料の携帯型蛍光X線分析を開始すること、課題として産地資料を増やす必要があることなどを確認した。また、研究成果の発表スケジュール、論文投稿先についての計画を練り、10ヶ月間の共同研究の詳細なプランを作成した。 また、マンチェスター大学滞在中に、イギリス、レディング大学およびロンドン大学の研究者と併行して共同研究を進めることを計画しているが、その準備として、電話およびEメールにて共同研究者らと会談をおこない、研究テーマ、研究資料、研究計画について再確認した。その際、9月に資料収集のためのフィールドワークをおこなう計画についても検討した。さらに、研究計画にある黒曜石の産地同定をおこなう準備として、筑波大学に収蔵されている黒曜石資料の予備分析をおこなった。同様に、フリント石材の加熱処理実験に関しても、予備実験をおこなうとともに、関連文献資料の収集を開始した。 平成27年度中は補助金の使用は開始しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始後1ヶ月を経過したのみであるが、研究計画は予定以上に順調に進んでいるといえる。イギリス、マンチェスター大学へ滞在して共同研究をおこなう上での事務手続きはすべて終了し、あとは平成28年4月16日に渡航し、共同研究に着手するのみとなっている。さらに渡航前の段階で共同研究者とコンタクトを密にとり、研究計画の詳細を確認するとともに、すでにその準備に取りかかっている。石材の加熱処理実験については3月にポルトガルでおこなわれた国際学会において情報を収集し、この分野で大きな実績のある、ドイツ、チュービンゲン大学の研究者から研究協力を得る確約を得た。 共同研究で用いる研究資料も問題なく確保できており、マンチェスター大学に到着後すぐに、黒曜石資料の蛍光X線分析を開始する手はずが整っている。また、文献上で公表されている他の研究者による分析データの収集をすでに開始しており、西アジアにおける黒曜石産地分析の総括的データベースの構築に着手したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マンチェスター大学に拠点を置き、黒曜石の携帯型蛍光X線分析を開始する。携帯型分析機器の利点を生かし、博物館収蔵資料や西アジア諸国からの持ち出しが難しい資料を現地にて分析する。大量の資料を分析することで、既往の黒曜石産地同定分析をさらに発展させ、産地同定のデータベースを構築するとともに、西アジア新石器時代における黒曜石交易の様相をあきらかにする。課題となっている産地黒曜石資料の入手については、産地資料を保有する複数の研究者にコンタクトを取り、研究協力を仰ぐ予定である。 レディング大学では、石器の加熱処理研究を行う。熱ルミネッセンス(TL)法による分析を新たに導入し、これまで石器の外見上の変化では判別不能であった低温域での加熱処理の有無を理化学的にあきらかにする。外部からの研究協力者を含め、機器分析の専門家を交えた研究チームを組織する予定である。また、新たな考古資料を入手するため、イランにおいてフィールドワークを実施する計画を視野に入れている。 ロンドン大学(UCL)では植物考古学の専門家であるドリアン・フラー教授と共同研究を組織し、穀物栽培の証拠となる炭化種子のデータと、穀物収穫具である鎌刃石器のデータを統計的に比較することで、農耕の発展過程と地域的な多様性をあきらかにする。植物考古学分野でのデータの収集と分析をフラー教授が、石器データの分析を私が担当することになる。現在、初期農耕は単起源から急速に西アジア全域に拡散したという説と、複数の起源を持ち数千年をかけて徐々に広がったという説が対峙しており、本研究によってその問いに1つの答えを与えることができると考えている。
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