2016 Fiscal Year Research-status Report
やまと絵の場と機能をめぐる受容美学的研究(国際共同研究強化)
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15KK0037
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
井戸 美里 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 講師 (90704510)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | やまと絵 / 屏風 / 名所 / 和歌 / 歌枕 / 日本画 / 歴史画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大画面の「やまと絵」の遺品が多く残されている室町時代から国家的な歴史画を描く「日本画」に至るまで、「日本的なるもの」として受容されてきた美術作品(特に屏風絵)について、その享受された場やその機能について再検討を行っている。本研究は科研費補助金に採用中の若手研究(B)(2015-2018)と並行して行う研究となる。研究成果としては、AAS in Asiaにおいて共同研究者の若林晴子氏(プリンストン大学)とともに「「都」にまつわる言説」に関するパネルを企画し、中世京都において文学・美術・歴史の立場から「都」が表象されてきたのかについてそれぞれ報告を行った(6月25日)。また、明治期に再構成された「歴史画」についても、昨年度に続き考察を進め、美学会の国際版オンライン誌であるAestheticsに投稿した。さらに、本共同研究の一環としては、海外の研究者を招聘し、国際シンポジウムや講演会を開催することで、国際的な立場からの日本美術研究を目指すとともに、広く一般や学生に公開を行っている。7月6日には、共同研究者である香港城市大学のLEE Wun Sze Sylvia氏を招き国際シンポジウム「東アジアにおける庭園と絵画の位相」を開催し、研究代表者は自然風景のミニチュアとしての「洲浜」が、日本においては障壁画から庭園までを一続きの空間として構想された可能性について考察した。また、海外における日本研究の普及活動も視野に入れながら、中世の皇族の日記『看聞日記』における美術関連記事の講読・解釈・英訳事業に参加し、本年度は10月にハイデルベルク大学で開催した。実際の作品調査については、ソウル国立中央博物館(2月)、Erik Thomsenギャラリー(9月)、プリンストン大学美術館・ハーバード大学美術館(3月)にて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「若手研究(B)」と並行して行うことにより、国内外の美術館・博物館やディーラーに所蔵されているやまと絵屏風の作品の調査が可能となったこともあり、実際の作品調査や報告活動を円滑に行うことができている。また、本研究の成果報告については、日本の学会に加え、国際学会での発表や共同研究者の協力のもと国際シンポジウムの開催を通して順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は口頭発表を中心に行ったため、次年度には「吉野図」と「洲浜の構想」の二つのテーマについて論文としてまとめることを予定している。また新たな研究として、幕末から明治期におけるやまと絵の再生について、特に、日本人画家による「花鳥画」の再編事業について考察を進める。5月には意匠学会例会、6月には国際シンポジウム「東アジアにおける庭園と絵画の位相 II」、7月には16世紀後半から18世紀前半における美術作品の流通をめぐる国際シンポジウムにおいて、段階的に報告を予定しており、同年中に論文を投稿する。
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