2016 Fiscal Year Research-status Report
中国農村のお喋りとその伝播から記憶を再考する(国際共同研究強化)
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15KK0038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 弓 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD) (50466819)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 中国史 / オーラルヒストリー / コミュニティ / 記憶 / 中国農村研究 / 信仰と近代 / 雨乞い / 記憶と歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3月7日より研究を開始したため、1か月弱の研究期間における実績は論文執筆のみであった。カナダオーラルヒストリー学会の機関誌であるOral History Forumの特集号Generations and Memory: Continuity and Changeへ、論文“The Transmission of Wartime Memories: Films, Stories, and Dreams in Rural Villages of Shanxi, China”を投稿し採択されて2017年3月31日に公刊された。同論文ではこれまでの調査をもとに中国農村コミュニティ内部での戦争記憶の継承について、夢、映画、語りそして集団農業によるコミュニティ形成といった多様なメディアの絡み合いによって人々の記憶が構成されている実態を、オーラルヒストリーによる聞き取り調査と史資料の組み合わせによって丁寧に論じた。特に夢による戦争の追体験を取り上げた点、日中戦争最前線の40村における250人以上の農民に対する広範な聞き取り調査を行った点、記憶に対する新しい分析視角を用いた点は英語圏の査読者からも高い評価を得た。同論文は、英語圏で中国農村コミュニティ論を展開していく第一歩となった。 また、同特集号では、編集も担当し、英語圏或いは世界のオーラルヒストリー研究の傾向を概観できたこと、カナダの共同編集者と国際的な連携作業を行ったことは、今後英語圏において共同研究を実施するための基盤となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1か月という期間内で一本の論文を発表できたことは、順調な進捗状況であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年3月の渡航までに、国内で明清期キリスト教宣教師資料の収集を行う。国内では、東京大学東洋文化研究所、上智大学、同志社大学等に一部の宣教師資料が保管されているため、各大学を訪れて資料を収集し、イギリスでの調査活動の基盤とする。また、渡航予定のイギリスオックスフォード大学を事前に訪れ、図書館の資料をできる限り概観し、渡航後の資料収集の目途をたてていく。 これまでの中国における調査結果をもとに、雨乞いと中国農村コミュニティに関する論文を執筆し、現時点での調査研究の内容をひとつのかたちにまとめる。また、菅教授の主催する「パブリックヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」に積極的に参加し、これまでの研究活動をひとつの歴史実践と捉えた論文を執筆して自身の研究内容を異なる研究視点から捉えなおす。同様に、羽田正教授の主催するGlobal History Collaborativeのシンポジウムや研究会に参加し、グローバルヒストリーの世界的な研究内容を概観し、本研究をミクロヒストリーからグローバルヒストリーへつなぐ回路を模索する。これらにによって、英語圏での歴史研究を発展的に吸収し、本研究を有効なかたちで歴史学研究に位置づけていく土台を構築する。
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