2018 Fiscal Year Research-status Report
模型標本の技法及び構造研究-修復法の確立とレプリカ保存法-(国際共同研究強化)
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15KK0040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 敏正 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (10516769)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | 彫刻 / 漆 / 学術標本 / 3D / 保存 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、渡英中に引き続き、漆および油性塗料についての研究活動を継続して進め、イギリスにおいて実験的に制作を行った漆製品についても継続的に調査を実施した。昨年度ヴィクトリア&アルバート美術館にて開催された展覧会「Lustrous Surfaces」は、部分的に展示更新が行われ、漆製品及びその他の油性塗料による工芸品については収蔵庫へと移設されたが、本研究課題において実験的に制作を進めた成果物は現在も継続して展示中であり、現在も研究成果の一環として情報発信に努めている。 加えて学術標本調査として、18世紀から19世紀にかけてイギリスにて制作された木製品(家具を含む)についても、塗膜の劣化状況、修復処置等の調査を6月に実施した。さらには、3月にはイギリスでの研究成果の一部をドイツで公開し、現在も継続している。 明治期以降、人工的な材料を用いて制作された学術標本の内、古いものから劣化は進んでいる状況にある。明治期に制作、および輸入された学術標本は、日本の近代化に教育研究という側面において、多大なる影響を与えたものである。国内にはこのような外国製の標本に対し、修復する技術を検討されておらず、保存管理に大きな問題を抱える状況が長く続いている背景の中、本研究活動をきっかけに、これまで着手が困難であった輸入された学術標本について修復技術の基盤となる研究を進める事が出来れば、今後の博物館における展示情報発信にも極めて大きな影響を与えると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況としては、イギリス・ヴィクトリア&アルバート美術館との共同研究でありつつも、研究成果の情報発信活動としてはドイツ、フランスにおいて公開も計画されており、順調に研究を進めている状況である。また、ヴィクトリア&アルバート美術館での共同研究者が来日した際には東京大学総合研究博物館における標本の現状視察に加え、今後の研究計画についても再度調整を検討することができた。 これらの成果は、今後、国内において文化財保存修復学会での発表を計画している。平成30年度には、東京大学も所蔵する、国際的に歴史的価値の高い20世紀初頭に制作された幾何学模型の修復、復元をテーマとし、東京大学数理科学研究科において開催された「数学と芸術の交流シンポジウム」 「Forms in Nature and Art」の2回、口頭発表を実施し、今後、学術標本の歴史的位置付けが国際的に高まるよう努めた。平成29年度に実施した学術標本と美術領域の関係性を追求する展示企画、およびディスカッションイベントについても継続して準備を進めており、来年度に東京大学総合研究博物館インターメディアテクにおいて実施が決定している。本研究は、学術標本の海外学術調査を目的としながらも、学術標本を通じ国際的に研究機関のネットワークを広げ多くの研究機関で連携を取ることが可能になるよう努めており、今年度の活動が最終年度である来年の展示公開に向けて十分に役立つものになったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究の最終年度であり、再度イギリスへの短期間の渡航も予定している。本研究のように、博物館の収蔵品に対し研究者がネットワークを形成し、自身の所属する館において収蔵品を管理しつつ調査及び、修復・復元等を踏まえ、実践的に展示企画までを含めた活動を推進していくことが、博物館において重要な課題になると考える。また、学術標本の修復研究は、学術標本の保存を目的とするだけでなく、これまで関係性が明白ではなかった異分野を横断的に繋げる成果をもたらす研究にもなり得る。最終的に大学博物館として展示公開を実施することで、包括的に研究を遂行することがでると考える。今後も継続的に学術標本を通じた国際的な研究活動を継続し、さらなる情報発信に努めていきたいと考える。
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Research Products
(3 results)